買い物
涼宮、水月、茜ちゃんの買い物に付き合わされている。もちろん、荷物持ちとしてだ。

3人は、ストレスでも発散するかのように買い物を楽しんでいる。ここに来て30分足らずで、俺の前には箱の塔が出来ている

「これもお願します」

茜ちゃんはそう言うと、箱を俺の方に投げる。やっとの思いで、積み重なった箱の上にのせる

そういえば、ここに来た当初の目的は、孝之へのプレゼントを買いに来たはずだよな〜

何でこんなことになってるんだ? まー、ここに入る時に店先の『夏物、大処分!』と書いた垂れ幕を見た時から、こうなるだろうと思ってしな

これだけの量を、らよく持ってるよなー。

目の前に積みあがる箱を眺めて、ため息をつく。

「おーい、このくらいでいいだろー」「そうね。これだけあれば、しばらくは大丈夫ね」

「そうですね」「ごめんね。重くない?」「大丈夫よ!男なんだから!」

『ただいまより、タイムセールを開始します。夏物婦人服、表示価格より半額!半額です!』

それを聞いた水月と茜ちゃんは、お互いの顔を見合わせて大きく頷き、売り場へと走って行く。

俺は近くのベンチに腰を下ろして休んでいると、涼宮がジュースを持ってきてくれた。

「ありがとう。涼宮は行かないのか?」「うん、私はもう十分だから」

涼宮は俺の横に座る。しばらくして、二人が戻ってくる。

「どうだった?」「水月先輩、酷いんですよー」「どうしたの?」「奪い取るんですから!」

「茜!あれは戦争な、欲しいものがあったら、何が何でも守り抜かないと駄目なよ!」

この時、涼宮が行かなかった理由が少し判った気がした。

「帰るぞ!」「まだ駄目よ!」「まだ、何か買うのか?」「プレゼントです!」

結局、何も買ってなかったのか。そう言えば、俺も何か買わないとな…その前にこの荷物を何とかしないと

「俺はこれを車に積んでくるから」

そう言って駐車場に行き、荷物を積み込む。何とか積み込み、3人が待っている所に戻る。

いろいろな売り場を回り、それぞれプレゼントを買うなか、涼宮は何も買わなかった。

「あれ? 涼宮は何も買わないのか?」「お姉ちゃんは、自分にリボンでも付けて『孝之く〜ん、お誕生日おめでとう』とか言うつもり…」

俺は茜ちゃんの頭にスパンと叩く。

「いたー!何するんですか〜!」「馬鹿なことを言うからだ!涼宮を見てみるろ。あれじゃー、しばらくは何も出来ないぞ」

俺は、顔を真っ赤にしたまま固まっている涼宮を、おんぶして車まで運んだ。

涼宮を車に乗せ終わった時、水月がにっこりと微笑みながら、俺の方に手を出していた。

「何だ、この手は? 金なら無いぞ!」

水月にスパンと叩かれる。

「鍵よ!鍵!」「鍵? ほら」

家の鍵を渡すと、また叩かれる。軽い冗談のつもりだったのだが、どうやら通じてないようだ

頭をさすりながら、水月に鍵を渡す。鍵を受け取ると、さっさと運転席に乗り込む

「もしかして、帰りは…」「そうらしいぞ…覚悟はしておいた方がいいかもな」

「何やってるの〜? 乗らないの?」

正直な話し、乗らなくてすむなら乗りたくない…だがここから帰るためには、これに乗るほかに方法は無い。

しぶしぶ車に乗り込む。ここから家でどうやって帰ったかは、まったく記憶に残っていなかのは言うまでもない

ーENDー



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