秘密の花園 第四章

『え…忍が…』『そうなの…昨日ね、お父さんが迎えに来て…』『嘘…嘘だよ…だって、明日も遊ぶって…』

そう言い、下唇を噛み締める

『ゴメンね。でも、仕方がないんだよ…』『仕方なくないもん!そんなの、勝手だもん!』

そういって、忍を預かっていた家のおばさんを睨み付ける

『でもね…』『煩い…煩い…』

そう叫びながら、おばさんをポカポカと叩く。そんな私の肩をそっと持って、私の目をじっと見る

『これ…忍ちゃんが、あなたにって…』『忍が…私に…』

おばさんは黙って頷く。手をだすと、その上にそっとペンダントを置いてくれる

『これ…』『そうだよ。忍のお母さんの形見だよ』

じっとそのペンダントを眺める

『それを私に渡す時にね、ゴメンって泣きながら言ってたわ…』『忍…』

下唇を噛み締め、目から涙が零れ落ちる。そんな私をおばさんは優しく抱きしめてくれる


『変なこと、思い出しちゃった…』

屋根の上で空を見上げながら、そっと涙を拭く。部屋の中に入ると、忍は気持ち良さそうに寝ていた

『そんなに無防備だと、襲っちゃうぞ』

と言い、襲う格好をしてみるが反応が無い

何やってんだろー私…馬鹿みたい

そっと、忍の横に座って忍の寝顔を眺める


正門を抜けると、前から委員長が走ってくる。そのまま首を刈り取る感じ、連れ去られる

そのまましばらくひこずられたのちに開放される

「単刀直入に言いわ…休みなさい!」『たぶん…聞こえてないよ…』「え!?」

委員長は、ぐったりとその場に倒れる俺を見て叫び声をあげる


「偉い目にあった…」「ゴメン…」

委員長は両手を合わせながら、何度も頭を下げる

「もういいって…。で、何で俺が休むんだ?」『もしかして、学校に関係あるとか…』

その発言に委員長はドキッとした顔をする

「あるんだな…」「べ、別に無いよ…」『美穂って嘘、下手だよねー。顔にもでてるしー』「だな…」

委員長は観念し、一枚の掲示物を差しだす。それは、学校新聞だった

「これがどうかしたのか?」『別に変なところは無いよねー』

委員長は黙って、とある記事を指差す。そこに書かれていることを見て、絶句する

『熱愛発覚!転校生と学級委員長ラブラブ…』

「な、何だよ。これ…」『こんなの書かれてたら、冷かさるわね。確実に…』「だから、お願い…」

委員長は手を合わせながら頭を下げる

「で、俺は何時まで休めばいいんだ?」「ずっと!」

そいつは楽で良いやー

『確実に留年だね』「なにー」『留年したら、一緒にあっち行こう…』「行きません!」

キッパリと答えると、瑞希は残念そうな顔をする

「ま、とりあえず行こか…」「何処に?」「学校!」『そうだね』「嫌よ!私は、絶対に…」

『美穂は行きたくないんだよね?』「そうよ!」『だったら、私が行く〜♪』『はい!?』


『先に校門に行ってて』といわれたけど…何をしてんだ?

ドドドド……

音がする方を見てみると、徹がこっちに向かって走って来ているのが目に入る

ある程度の間合いに来た時に飛び上がり、顔面に蹴りくらって数メートル吹っ飛ばされる

「この…浮気者ー!何のよ…これ!」

徹は、委員長が持っていた物と同じ物を差しだす

「それは…誤解だって…」

徹はしらーっとこっちを見る

「信じてくれよ…委員長とは何にも無いんだって…」「関係が…無い…」

コクコクと何度も頷く。徹は一枚の写真を取り出す

「ここに写ってるのは、何なのかな〜?」「え!?」

慌てて、徹から写真を取り上げて見てみる。その写真は、俺と委員長が抱きしめあっている写真だった

「あ…」「これでも、関係ないって…」「いや…これには日本海より、深い訳があってな…」「わけ〜?」

コクコクと何度も頷く。そして、説明を始めようとした時

「忍〜!」

委員長が、そう叫びながら抱きついて来る

「どわ〜!」「あ〜!」「忍…。すりすり…」

徹は、その光景を見て硬直する。直感で、ここに居てはまずいと感じ取り、委員長と一緒にその場から走り去る

そのまま、近くの公園へと逃げ込み、現在の状況を整理すことにする

「とにかく。今は、美穂じゃなくて瑞希なんだな」「そう!」「で、美穂はどうした?」「それはね…」


「本当に良いの?」『今さら返してって言った所で、返してくれる?』「嫌!」『でしょうね…』

美穂は溜息をつく。瑞希はじーっと美穂の胸を見た後で、ふっと笑う

『何が言いたいのよ!その笑いわ〜』「別に〜深い意味はないよ〜」

瑞希はニッコリと笑う

『あるは、絶対に!』「あるよ。小さいって」『むき〜!確かに、私はぺったんこよ!だからなによー』

「ただ何となく…可愛そうだなーって…」『ムキー!言わせておけばー!体を返しなさ〜い!』

美穂は瑞希に向かって行く。瑞希はしめしめと笑い、隠し持っていた小瓶を取りだす

瑞希が取り出した瓶が光り、中に美穂が吸い込まれる

『ちょっと、何なの?』「しばらく、そこで大人しくしてね」

瑞希はそういって、蓋を閉める

『ちょっと、出しなさい!』「やっぱり、生身は良いよねー。今日は、忍と…むふふふ…」

『ちょ、ちょっと…変なことしたら…』「大丈夫。その時は、避妊はちゃんとするから」『そんな問題じゃな〜い!』

瑞希は手を振りながら部屋から出て行く

『ああ…私の…私の…』『キャー!』

ドタドタ…

『大丈夫かしら…私の体…』

美穂は、そうポツリと呟く


「凄いなー。何処で知ったんだ?」「学校のオカルトクラブで知ったのよ」「あははは…」

そういえば、そんなクラブもあったかも。今の美穂を見たら、目から鱗だろうな

「やっぱり、生身って良いねー。こうして、忍と腕も組めるし」

そういって、瑞希は腕にしがみつく

「は、離れろよ…」「嫌…」

瑞希は、目をウルウルとさせながらこっちを見る

「う…」

何だよ、この罪悪感は

「少しだけな…」「うん。どっか行こう」「今から?」「そう!学校には戻れないし」

それもそうだな…帰ったら、確実に殺される

「だから、どっか行こう」「でもな〜制服だしな…」「それなら大丈夫」

瑞希はニッコリと笑い、茂みへと消えて行く

まさか…このことも予想済みだったのか?

しばらくして、瑞希が戻って来る

「次は、忍だね。家へ行こう」

そういって、瑞希が歩き出した時に足が縺れ、俺の胸元に倒れこんで来る

その時に、ふわっと瑞希の髪から良い匂いが漂ってくる

「あ、有難う…」「い、いや…」『みつけた〜!』

声がした方を見ると、徹がこっちに向かって走ってくるのが見える

徹は、数十メートル離れた場所で飛び上がり、そのまま膝蹴りの体制に入る

世間の法則を無視しながら、加速しつつこっちに向かって来る

「いい…」

瑞希を抱きしめ、そのまま横に飛んで事なきを得る

「走るぞ…」「解った…」

瑞希の手をしっかり握って走りだす


かなり走り、ヘトヘトになり壁にすがる

「はぁはぁ…」「忍。泊まる?休憩する?」「泊まりは、まずいだろう」「休憩だね。何処にする?」

「はぁ…?」

ゆっくりと顔を上げて、愕然とする

「こ、こ、ここは…」「そう!ラブホテル街!もー、忍ったら〜。その気があるんなら早く言って世ね〜」

瑞希は色気たっぷりに言う

「ち、違う…俺はだな〜」「そんなに、恥ずかしがらなくても良いよ。何処にする?」「だーかーらー」

「決められないの?だったら、私が…」「お前…人の話を全然聞いて無いだろ?」「うん!」

その返答にがっくし肩を落とす

「あのさ〜」

顔を上げた時、走って行く徹が目に入る

ヤバイ!見つかったら、確実に瑞希の仲間入りだ。どうする…腹に背は変えられんか

瑞希の手を引張り、近場にあるホテルに向かう

「何だ〜。やっぱり…」「神に誓って、そんなつもりは…」「解ってる。でも、優しくしてね〜」

はぁ〜と大きな溜息をつきながら中に入る


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