Hand

無常な雨が降り続く…私は、何もせずにただ一人でその場に立ち尽くす。この世の終わりかのように…

今の私は、せっかく手に入れかけた…幸せを私の不注意で失う寸前に追い込まれてる

ゆっくりと空を見上げる…そこには黒い雲と雨粒がだけが存在している。それを見ていると、自然と目じりがあつくなり

一適の涙が頬をつたって落ちる。涙は、雨と混じりあって地面へと落ちる

今の私には、その空に向かって叫ぶことしか出来なかった…。


とある通りの路地を抜けた空き地で、ずっと泣き続けている少女が一人

涙もでなくなりっている。それでも少女はひたすら泣き続ける。誰かに気がついてほしいかのように…

そんな彼女の前に一人の少年が立ち止まり、そっと手を差しだす。少女はゆっくりとその手を掴む

それは、ごく普通の手だったのだが、少女にはとても温かく感じれる

少女は、一歩…また一歩とその少年と一緒に歩き始め、その空き地から出て行く


「ね〜。これ可愛いね?」「そうだね」

一人の女性が露店に置かれてあるアクセサリーを楽しそうに眺める

その後を、荷物を持った男性がゆっくりと歩み寄りって並ぶ

「買ってあげようか?」「ううん。いい…」

女性は首を横に振って微笑む。男性は、女性が見ていたアクセサリーを手に取る

「これ、いくらですか?」「え…私…」

男性は、女性の方を見てにっこりと笑う。買ったアクセサリーをつけてあげる

「ど、どうかな…?」

女性は照れくさそうに男性へと問いかける

「良いと思うよ」

男性の答えに女性は笑顔で答え、男性の腕に自分の腕を絡まる

そして、二人は同時に歩き始める。その光景を後方から呆れ顔と苦笑いを浮かべながら見ている二人が居る

「ねー。あの二人どうにかならない?」「出来ると思うか?」「無理よね…」

女性はため息をつく。男性は苦笑いを浮かべながら二人の後を付いて行く

「タカシ…」「どうした?」「あっち行こう!」

そう行ってタカシの手を掴み、強引に先を歩く二人とは別の方向へと歩いて行く

「お、おい…良いのか?」「良いの!あの二人と居ると、こっちが変になっちゃうもん」

タカシは『たははは…』と笑う

「やっぱり…まずいと思うぞ、あの二人に…な、マサミ」

マサミはキッとタカシを睨む。タカシはビクッとする

「私と一緒なのが不満なの?」「いや…別にそうじゃないけど…」

タカシはしどろもどろで答える。マサミは『さ、行くわよ!』と言わんばかりに、タカシの手を引っ張る。


「まだ…あるんだ…ここ…」「あれから随分とたつのにな…」

そっと手を離してゆっくりと歩き始め、少し進んだ後に男性の方を向く

「ここで…」「そうだね。始まったんだよ」「うん…」

女性は、また背を向けた後に空を見上げながら、手を横に広げて微笑む


ゆっくりと歩んで深い闇がひろがる場所の淵へやって来る

当然だが、底など見えることのない深い闇がすぐ前にひろがる

ゆっくりと目を閉じて、上を向いてポツリと呟く

「皆…今まで私と居てくれて…有難うね…。さよう…なら…」

一適の涙が頬を伝って地面に落ちてはじける。ゆっくりと両手を広げた後、体を闇へと傾ける


「遅い!」

マサミはイライラした様子でそう叫ぶ

「仕方がないんじゃないか?二人でさ…よろしくやってるんじゃ…」

タカシはマサミに睨みつけられ、口を噤んで頭を下げる

「ちゃんと連絡したの?」「ちゃんとしたって…」

タカシは必死に訴えるが、マサミは半信半疑の視線をあびせる。

「おい…行ってみようぜ…」「事故だってよ…」

二人の前を通り過ぎる数人の通行人の話し声が、二人の耳にはいってくる

「事故…?」「らしいな…」「怖いわね」「だな…」

二人のたわいもない会話をしていると、今度は救急車が通り過ぎる

タカシは、それを見た瞬間に一抹の不安感を覚える

「俺も…見てくる…」

タカシは、そういうと荷物を置いて走りだす

「え!?ちょ…ちょっと…」

タカシが走り去った後、マサミの周囲にはさらに人が近づかなくなったそうな…


闇の中を落ちている時、今までの楽しい思い出などが闇の中に浮かんで消える

でてくる映像の数が徐々に減ってゆく。今度は、闇の中から無数の黒い手が私を掴もうとする

ゆっくりと目を閉じ、その手に自分の身をゆだねる


タカシが現場に着いた時には、野次馬でごったしていた

とても、現場自体を見ることは出来ないと思ったが、偶然に人の隙間から現場が少し見える

現場にはガラスの破片が散らばり、そこに一人座り込んでいる人の姿が…

タカシは、人ごみを掻き分けてそこへと向かう

向こうもこっちに気が付き、一気に泣き顔になってこっちに駆け寄って来て、タカシの胸へと飛び込む

「私の…私の…」「何があったんだよ…」

タカシは、ゆっくりと現場を見渡しながらそう問いかけるが、今は答える状況でないことは明白だった


おまけ

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