判れ
「遙…退院おめでとう…」「涼宮…おめでとう…」「有り難う…」

速瀬は、やっぱり来なかったか…

「あのね…さっきまで、水月もここに居たんだよ」「え!?水月が…」「速瀬が!?それで何処に…?」

涼宮はゆっくりと首を横に振る。それを見て急いで、部屋から出て走りだす

速瀬…何処に居るんだよ…

病院内、病院の外、駅までの道、海岸を探したが速瀬は見つからなかった

「畜生!何処に居るんだよ!」

は!そうだ。あそこを探してなかった!

急いで走りだす


階段を駆け上がり、目の前のドアを開けると同時に、風が吹き込んでくる

最初はまぶしくて良く見なかったが、次第に目がなれてくる。そして、屋上に立ち尽くす速瀬が目に入る

ゆっくりとドアを閉める。速瀬はドアが閉まる音を聞いて、驚いた顔でこっちを見る

「よ、よう…探したぞ」「ど、どうして…ここに?」「いろいろ探して、最後にここに来たんだ…」「偶然…なんだ…」

速瀬は空を見上げる

「何でこんなところに居るんだよ?涼宮と一緒に…」

速瀬は黙ったまま首を横に振る

「良いの。私はここから、遙を見送るから…」「速瀬…」「今の私は、孝之に会う勇気がないの…」

速瀬はゆっくりと目を閉じて、自分の胸をそっと抑える

「速瀬…それで、俺達より速く来て涼宮と…」「うん…そう…」

畜生!今の俺には何も出来ない…。畜生!速瀬がこんなに苦しんでるのに…俺は、俺は

グッと手を握りしめる

「行かないと、遙達が待ってるわよ…」「そうだな。でも、俺は行かない…」「え!?どうして…?」

「速瀬が行かなのなら、俺も行かない…」「何を馬鹿言ってるのよ…」

水月は耀様に動揺する

「そうだな…馬鹿だな。大馬鹿だぜ…」

苦笑いを浮かべる

「速瀬…聞いてくれるか?」「え!?」「俺な…ずっと前から…」「やめて!」

速瀬は両耳を抑えながら叫ぶ

「速瀬…」「聞かなくっても判ってる。今の私には孝之しか居ないの…。だから…」

そっと水月に近づく。そして、水月をやさしく抱きしめる。

水月は最初は小さな声で泣き、次第に声を大きくしていく


ピロロロロ…

「これで、さよならだね」「そうだな…。また、帰って来るんだろ?」「さあね…」「さあって…」

「ふふふ…冗談よ」「何だよ…こんな時にまで…」

プシュー!

ゆっくりとドアが閉まり、速瀬はドアの向こうで何かを言う。

「え!?何だって?」

速瀬は必死に何かを言ってるが、ぜんぜん聞こえない。そして電車が走りだす

速瀬の乗せた電車は遠くに消えて行く

じゃあな…速瀬。いや…水月

しばらく電車の方を眺めていると、携帯が鳴る

ん…誰だ?

携帯を取りだす、そこに表示されていたメッセージを見てふっと笑う

そこに映し出されたメッセージは『またね…』と…

ーENDー



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