花火大会
「お母さ〜ん、早く〜」「はいはい…」

お母さんに着付けをして貰う。その光景を羨ましそうに茜が眺める

「はい。出来たわよ」「有難う。どうかな〜?」「可愛いわよ」

お母さんは手をそっと頬にあてながら笑う

「私も行きたいな〜」「駄目だよ…今日は友達と一緒に行くんだから…」「ぶ〜!」

「茜。聴き訳がないことを言わないの…」「は〜い!」

茜はむすっとした顔をする

ピンポーン!

あ、水月だ

急いで玄関に向かうが、それより早く茜がドアを開ける

「水月先輩!」「キャ!」「茜〜」「あは…あははは…」

水月は苦笑いを浮かべる

「水月先輩!一緒に行っても良いですか?」「え!?」「私も行きたいんです」

水月は少し考える

「駄目よ!」「えー何ですか…」「今回は、絶対に駄目なの。判って…。ね」

水月は手を合わせながら誤る


「ねぇ…水月…」「どうしたの?」「孝之君…来てるかな?」「来てなかったら、孝之は星になるだけよ!」

「えーそれは駄目だよ…」

私の反応を見て水月はクスクスと笑う

「冗談よ。冗談」「水月〜」「もし、来てなかったら孝之の人間性を疑うわ」

待ち合わせ場所が近づくにつれて、胸がドキドキし始める

そこの角を曲がれば、孝之君が居るんだ

そう思うと、さらに胸がドキドキし始める

「孝之〜!」「遅いぞ…」「ごめんね…」

うわ〜。孝之君がこんなすぐそばに

すっと水月の後ろに隠れる

「どう…孝之?」「馬子にも衣装だな」「それって褒めてるのかしら…?」

何か話さないと…でも、駄目できないよ

「遙〜。後ろに隠れてないで…」

水月は私を前にだす

「彼女は私の親友の…」「は、始めまして…。す、涼宮遙です…」「俺は鳴海孝之。よろしく」

駄目…孝之君の顔を見ることが出来ないよ〜

「孝之、早く行かないと始まるぞ?」「もうそんな時間か?」


うわ〜。どうしよう…私の横を孝之君が歩いてる

一緒に歩いている時も、孝之君は何か話をしているが、内容はまったく判らない

たまに相槌を打つくらいしか出来なかった

会場に行くと、凄い人の数だった

「凄いわね〜」「急がないと、場所がなくなるぞ」「そうね!」

水月はさっさと歩いて行く

あ、水月…待ってよ〜

水月は人込みの中に消えて行く

「速瀬〜!駄目か、完全にはぐれたな…探すか」「う、うん…」「そうだ。手を出して」

え!?

「手ですか…?」

言われた通り手を出すと、孝之君は私の手を掴む

「これで逸れる心配は無い。よし探そう」

今…孝之君と手を繋いでる

心臓がドキドキいってとまらない

しばらく探すが、水月は見付からなかった。そして、花火の打ち上げが始まる。

ドン!

「キャ!」

とっさに孝之君に抱き付く

「え!?」「あ!?」

慌てて離れる。胸がドキドキいってとまらない。続けて二発目が打ちあがる

ドン!

「キャ!」

また、孝之君に抱き付く

「怖いの…?」

孝之君は優しく聞いて来る

「は、はい…」

離れながら答える

駄目…心臓が破裂しそう程、ドキドキいってる…。駄目…おさまって。

結局、その後も何を話したかはあまり覚えていない


石段に座り、さっき買ったたこ焼きを受け取る

「懐かしいな。昔、皆で来たよな」「うん。そうだね」「あの時は驚いたぜ、いきなりだもんな…」

顔を紅くする

「だって…本当に怖かったんだもん…」「御免…別に責めてるわけじゃないんだ。ただ…」「ただ…?」

首を傾げながら孝之君を見る

「何でも無い。たこ焼きが冷めないうちに食べよ…」「そうだね」

孝之君と一緒にたこ焼きを食べていると、花火が始まる。孝之君は、そっと私を自分の方に引き寄せる

私も孝之君に体を任せる

「綺麗だな…」「そうだね…」

花火は嫌いだけど…こうして見る花火は大好き…

ーENDー



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