誤解、そして…(公開版)
うーん…どれがいいかなー?

キョロキョロと店の中を見て回る。

そう言えば、水月の好みって知らなかったなー…どうしよー…。電話して聞く訳にもいかないし…

ふと、店の外に目をやると、茜ちゃんがキョロキョロしながら歩いていた。

ラッキー!茜ちゃんなら、きっと知ってるはずだよなー。

「茜ちゃん!」「あ、お兄ちゃん!ちょうどよかった」「え!?」

茜ちゃんは俺を店の中に押し込むと、俺にくっ付いてきた。

「ちょっと、茜ちゃん…」「お願いします、少しこうしててください」

なんだ〜?まさか、誰かに追われてるのか!?

しばらくて店の外で『茜さ〜ん、どこに行ったんですか〜?』と大きな声で叫んでいる男が現れる

そっちを向こうとし時、茜ちゃんがぐいっと俺の顔を引き寄せて、耳元で小さく呟く

「あの人は、私の追っかけ!なんです」「お、追っかけ〜!」

「あ!そうだ、少し付き合ってください」

そういうと茜ちゃんは、俺はグイグイと引っ張りながら店から出る

「あ、茜さん。どこに行ってたんですか?誰ですか、その人は?」

茜ちゃんは俺に引っ付き、にっこりと笑いながら俺の方をじっと見る

その目は、何かを言ってくれといわんばかりの目だった。

「俺は、茜ちゃんの友…ひぎゃ!」

茜ちゃんは俺の御尻を抓ねり『ちゃんと言って下さい!』と小さく笑顔で言う。

その笑顔は、ものすごい威圧感がある

「俺は、茜ちゃんの……何だ〜…」「もう、ちゃんと言ってよー!彼氏だって!」

「あ、こら!かってなことを…」「本当なんですか…?」

茜ちゃんは屈託の無い笑顔で頷くと、男のは2、3歩後ろに下がって、走り去って行く

なんだか、悪いことしたような気がするなー。

「ありがとうございました」「何があったの?」

「最近、しつこい人がたくさんいて、困ってたんです。でも、これでその心配もなくなりました」

「それはよかったね」「はい!ところでー、こんなところで何をしてたんですか?」

「そうだ!茜ちゃんに、聞きたいことがあったんだ!」「え!?」

きょとんとした茜ちゃんを引っ張って中に入る。

「茜ちゃんなら、水月が好きなもの知ってるよなー」「先輩の好きなものですか?」

茜ちゃんはしばらく考えて、思い出しように言う

「ドネルケバブです!」

それを聞いて、ずるっとこける。

「そうじゃなくって〜、動物とかでさ〜、何かあるだろ?」「そうですねー…イルカが好きですよ」

「イルカか〜…、あるかな〜?」

イルカ関係の物を探して見ると、意外なものが見つかる。

小さいな宝石を囲むように、イルカの彫刻が彫られている指輪があった

これで決まりだな!でも、この宝石の名前なって言うんだ?

その指輪を買い茜ちゃん一緒に店を出る。

「ふー、茜ちゃんのおかげで助かったよ」「いいえ〜、当たり前のことですよー」

「さようなら〜」「またな」

茜ちゃんと判れて帰ろうとした時、呼び止められる。

「ね〜、お兄さ〜ん…さっきの行為は何なのかしらー?」

振り返ると恐ろしい物があると思い、走って逃げようとするが、見事につかまる

「何を逃げてるのから〜!ちゃんと、こっちを向いてほしいんだけど!」

水月に強制的に後ろを向かされる。水月の顔は鬼の剣幕ではなく、ただにこやかに微笑んでいる

こんな時の笑顔ほど恐ろしいものは無い!

「ね〜さっき、茜が言ってたこと本当?」「え!なんのことだ?」

「茜の彼氏って話よー!どうなの?」「あれは、しつこい男を追い払うためにだなー…」

「そんな嘘が通じると思ってるの!正直に言いなさいよ!」「だから、さっきから…」

「まだしらをきるつもりね!」「うわー!ちょっと待て…」


しばらくお待ちください(ただいまボコボコにされています)


「お兄ちゃ〜ん、あれ?お兄ちゃんは?」「あ〜か〜ね〜!」

ビクと小さく飛び上がり、ゆっくりと後ろを向く。そこには、ボロ雑巾のようになったお兄ちゃんがいた

ゆっくりと視線をあげると、すごい剣幕の先輩の顔があった。

これは逃げないと殺されると感じ取り、急いで走り去る。

しばらく走って後ろを振り返って見ると、水月先輩の姿はなかったのでホッと肩を撫で下ろす。

ここまでくれば、安心ね。

誰かに肩を叩かれ、ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには水月先輩がいた

何で、先輩がこんなところに!

急いで逃げようとしたが捕まり、空中でじたばたしていると、先輩の方に向かされる。

「ね〜、茜〜。さっき言ったこと本当なのかしら?」「え!何のことですか?」

水月先輩はボロ雑巾になった、お兄ちゃんを突き出す。

「さっき言ったはよね〜!これが彼氏だって!」

うわー、これ扱いだよー。

「どうなの!正直に言いなさい!」「聞いてたんですか!?あれはですね…」

その後、水月先輩にことの次第を事細かに説明する。



「ふーん、そうだんった〜…」「だから、最初にもそう言ったぞ!」

まったく、頭に血がのぼるとなにを言っても聞きゃ〜しない

「あいてててて…」「ほらー、男でしょ!これくらい、我慢してください!」

「まったく、だらしが無いわねー」「誰のせいだ!誰の〜!あいたたた…」

ポケットから指輪の入った箱を取り出して、水月の方に投げる

「何これ?」「プレゼントだよ。あの日にあげるのを忘れてたからな」

「忘れてた…う〜う〜…」

慌てて茜ちゃんの口を抑える。

ふー危ない、危ない…。ここでばらされたらどうなることか

茜ちゃんが家に帰った後、寝室でボーっとしていると、パジャマ姿の水月が入ってくる。

「今日はごめんね…つい、カッとなって…」「いいよ、もう気にしてないからさ」

水月は黙って頷き、俺の横に座る。

まー、今日のことは俺に責任があるからな。

肩に重みを感じたので見てみると、水月が俺の肩に頭を乗せていた。

ふと、水月の手にさっきあげた指輪があるのに気がつく。

水月もその視線に気がついたのか、手を顔の前まで上げてじっと見詰る。

「これ、ありがとうね…大切にするね。これはね、私の誕生石なの…」「え!」

「『え!』って…まさか、知らなかったの?」

ポカーンとしたまま頷くと、水月はクスクスと笑う。

「なんだか、孝之みたいね」「馬鹿か!あいつと一緒にするな!」

水月はクスクスと笑いながら、部屋から出て行く。ベットに倒れこんで天井を眺めていると、

嬉しそうに、後ろに何かを抱えて戻ってくる。

「なんだそれ?」「今ね、台所に行ったら…茜からのメモと一緒にこれが置いてあったの!」

嬉しそうにイルカの人形を前に出す。

「これって、10万もするやつじゃないか!」

すっとメモを差し出したので、受け取り読んでみる

『水月先輩!帰りに福引したらこれが当たったので、ここに置いときますね』

ふーん、それでね〜。嬉しそうに人形を抱え、クルクルと回っている。

イルカが好きだってのは、本当だったんだな。

そうだ!確か…あれがあったはず。机の引出しを開けて一生懸命にある物を探す

あった〜!うわー、ボロボロだなー。

「どうしたの?」「うわー!何でもない、何でも…」

水月に見つからないように、後ろに隠す。

不思議そうな顔をした後、素早く後ろに隠した物を取られる。

「か、可愛い〜」

かなり前にゲーセンで取った、小さなイルカの人形を嬉しそうに眺めている。

「それもやるよ」「本当に!」

目を輝かせながら、顔をじっと見てくる。

「でも、ボロボロだぞ…」「いいの!さ〜、寝ましょう!」

水月は、人形を持ったままベットに入る。

「おーい、そんな大きな人形抱いたまま寝られると、俺の寝る場所が…」

言い終わると同時に、顔面にタオルケットが飛んで来る。

もしかして、床で寝ろって言うのか?

しぶしぶ、床眠ることのした


ある日、二人で出掛け時に水月の鍵に、見慣れてイルカの人形が下がっているのに気がつく

「その人形…」「うん、あの時の人形よ」

「うまいこと、直したもんだな〜!」「当然よ!手先は器用なのよ!」

「水泳しかとりえが無いのかと思ってたから…」「何ですって〜!こら〜、逃げるなー!」

水月の攻撃をかわしながら、駅へと向かう。

ーENDー



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