迎撃

バイクを止めて、ゴーグルを上にあげる。そして、鞄から地図を取り出す。

えっと…こっちで良いのよねー? この辺は何も無いから困るのよねー。

地図を手に持って辺りを見渡す。その時、頭上を戦闘機が飛んで行く。

え! 戦闘機!? 何でこんな所に…? 今は休戦のはずよ! 

今度は、それを追いかけるようにして、もう一機飛んで行く。

な、何なのよーいったい…とりあえず、あそこに行ってみれば何か判るはずよね。

バイクにまたがり、走らせる。


『今回のミッションは、当基地に潜入したスパイの迎撃です』「了解!」『あと、隊長が…』

「隊長がどうかしたのか?」『どうしたじゃないわ〜! ボケ〜! 勝手な行動をとりやがって!』

「あゆかーどうした?」『あゆって呼ぶなー!』「ヘイヘイ…あゆ隊長!」『そうさ! 判ってるじゃない』

「馬鹿は扱いやすくて良いぜ」『あん? 今何か言ったか?』「な〜んも言ってません!」

まったく、煩いだよ。無線を切っとくか〜。

無線スイッチを押そうとする

『無線を切ったら…撃ち落とすぞ!』

やべ! ばれてる。

『何時でも、お前の機体を撃ち落とせるから、そのつもりでいると良いさ』

スイッチからそっと指を離す。

『もう時期、逃げた敵機が見えて来るはずです』『ウッシャー! やったろうじゃない!』

「敵機発見! これより迎撃に移る!」『了解です。あ! 待って下さい』『どうしたのさ?』

『敵地より、三十機ほどの戦闘機がこちらに向かって来ます』『あんですと〜!』

おいおい…マジかよ。たしかミサイルは十発。足りねえじゃないか〜!

「あゆ! そっちのミサイルは何発ある?」『あゆって呼ぶなー! ボケ〜!』「良いから答えろ!」

『じゅ、十五発さ…』

十五発…俺が十発。あわせても二十五発か〜。

「応援は来てくれないのか?」『それが…出撃できる機体は一機あるんですけど、パイロットが…』

まったく、感じな時に居ないってか。

『私が出るわ!』『え、あなたは誰ですか?』『人手が要るんでしょ?』『でも…』

誰だ? まあ良い。

「誰か知らないが、頼む!」『判ったわ! 大急ぎで行くわね。それまで耐えてなさいよ!』

耐えろか…。まったく、ふざけた事を言う奴だぜ。そいつが来るまで、一機でも多く落としてやるぜー!

「あゆ! 行くぞー!」『だから、あゆって呼ぶなー!』



「ふ〜、お疲れさん」「おい! コラ! 隊長を呼び捨てするとは何事さ」「気にするな!」

あゆを無視して、海豚のマークの付いた戦闘機の方にあるいて行く。

戦闘機から、パイロットが降りて来る。

「何だ〜、男か〜!」

メットが顔に減り込む。

「私は、女よ!」「お、女〜?」

顔を摩りながら見る。

「どれどれ…」

パンパン…モミモミ…

この感触は…本当に女みたいだなー。

ベキ!ボキ!ゴキ!

「ウギャー!」

ヒクヒク…ヒクヒク…

「まったく、馬鹿な奴よね〜」「貴方が、今日からうちに配属になった…」

「速瀬水月です! 宜しくお願いします!」

ビシッと敬礼をする。

「隊員の紹介をしておきましょう。彼女が、部隊長の大空寺あゆさんです」

「少しはできるみたいね〜。でも、私には適わないわね。宜しくさ」

あゆと水月は握手をする。お互いに手に力を入れているのは、はたから見てもすぐに判る。

「彼はこの基地で一番の実力者の…」「ゴキブリよ!」「誰がゴキブリだ〜!」

「その生命力が、いい証拠じゃないさ」

あゆはと不適に笑いながら言う。むかついたので、あゆの頬を引っ張る。

「次に、オペレータの涼宮茜さんです」

「茜です。宜しく」「こちらこそ宜しく」「でわ、基地の中を案内させましょう。茜さん、おねがいします」

「判りました! さ、行きましょう」「そうね…」

二人は基地の中へと入って行く。


「あの二人って、いつもああなの?」「あ〜! 隊長とあの人ですか〜。そうですね…」

「ふーん…貴方は乗らないの?」「戦闘機にですか?」「うん!」「昔は乗ってました。でも…」

「でも…?」「姉が居なくなってから…乗ってません」

茜は苦笑いを浮かべる。

やっぱり…遙はここに居たのね。聞いた事があるわ、少し前にここが攻撃を受けて、隊員が一人…。

「水月さん?」「え!?」「どうしたんですか?」「ううん…何でもないわ」「そうですか?」

ガチャ!

「どうぞ! ここが、お部屋です」

今日から、私の新しい生活が始まるのねー。

「何かあったら、言って下さい」「その時は宜しくね」「はい。それでは失礼します」

鞄から写真立てを取り出し、机の上に置く。

絶対に見つけ出して見せる! 孝之…貴方が何処にいようと、絶対に!


ーENDー



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