ゲーム |
「だー、負けたー。もう一回、勝負!」「え〜!もう私疲れました」「孝之、男はあきらめが感じだぞ」 何回やったんだっけ? 勝率は、茜ちゃんが19勝1敗で孝之が1勝19敗だっけ。 よく飽きずにやったよな〜、感心するよ。まったく。 「孝之君、私とやろう?」「よし来い!でも、手は抜かないぞ」「うん、いいよ」 へー、涼宮が孝之とやるのかー。これは面白そうだなー。 肩を叩かれたので、振り返ると茜ちゃんが『ちょっとついて来て下さい』と言ったのでついて行く。 「はー、やっと開放されたー」「お疲れ様。しかし、孝之があそこまでしつこいとはなー」 「まったくです。あ、そこの棚からカップ出して下さい」「判ったよ」 台所で、茜ちゃんの手伝いをしている時も、部屋からは孝之の声が聞こえて来る。 どうやら、また負けているらしい。涼宮に負けるなんて、孝之の腕もたかが知れてるな。 気が付くと、俺の顔を茜ちゃんがじっと見ていた。 「俺の顔に何かついてる?」「今、お姉ちゃん達のこと考えてましたね?」 うぐ…。何で判るんだ 「鳴海さんでは、お姉ちゃんに勝てませんよ」「え? 何で?」 「自分がゲームのことを、何も知らないことに気が付いみたいなんです」 「別に、それでもいいんじゃないか?」「私もそう思うんですけど。ある日突然」 「『ゲームのこと教えて!』って言われたのかー」「はい。最初に、少し教えただけなんですよ」 「それから、自己流で強くなった…か」「はい。今では、私ですら勝てません」 恐ろしいや…涼宮の能力。 テーセットを持って部屋に帰ると、燃え尽きた孝之と上機嫌の涼宮が居た。 どうやら、孝之は徹底的にやられたらしい。画面に映し出されている数字は、30勝0敗だった。 テーセットを置いて、孝之を軽く突っついてみると、その場にバタンと倒れた。 「た、孝之〜!」「孝之君!」「当分は動けませんね」 とりあえず、孝之をベットに寝かせる。そのあとで、涼宮に聞いてみる。 「涼宮って、本当に名古屋撃ちしか知らなかったのか?」「うん…。最初に言った時はすごく恥ずかしいかったんだよ」 「確かにな、名古屋撃ちなんて最近は使わないもんな」「そうだよー、私も最初に聞いた時は何のことだろうって思いましたから」 「だろうな。その言葉を知ってる方が、逆に詳しいってことかもな」 そんなたわいも無い会話をして、時間をつぶした。 帰る前に、涼宮と勝負したが秒殺された。やはり、かなり強い。 涼宮に勝てる奴なんて居るのか? 「居ますよ!」「どわー!人の心を読むな〜」「違います、口に出てました」 慌てて口を抑えるが、いまさら意味が無いことは明白である。 「それで、勝てる奴って誰?」「それはですねー…」 その時、部屋のドアが勢いよく開く 「私よ!」「え!水月が〜」「そうです!」「水月ね、すごく強いんだよ。私なんて秒殺されるんだから」 涼宮を秒殺って。いったい、どんな戦いするんだ? 「ところで、何で水月がここ居るんだ?」「遙が対戦するところ」「水月ありってか…」「そうよ!」 はー、なんだかなー。 「論より証拠。見せてあげるわ!遙、勝負よ!」「うん、いいよ水月!」 見たいとも言っていないに、二人は勝手に勝負を始める。神技同士のぶつかり合い、どっちが負けてもおかしくない。 結局、水月が勝利を収めた。 この日から、水月と涼宮の前ではゲームの話はダブーになった。 |
ーENDー |