映画
「ほらー!起きて〜…」「うーん…あと10分だけ…」

「さっきから、そればっかりね〜…」

まったく、どうしてこうも寝起きが悪いのかしら?

昨日帰ってきて、『水月〜、映画のチケット貰ったんだ。明日行こうぜ!』って言ったのは誰よ!

布団を剥ぎ取ると今度は小さくなり、一向に起きる気配がない。

は〜…と大きくため息ついて、部屋から出る。

もう知らない!誰が一緒に行ってあげるもんですか!

片付けを済ませて、遙に電話をする。

「もしもし…」「あ、水月先輩」

「あ、茜〜。ちょっと遙に代わってくれない?」「お姉ちゃんですね、ちょっと待てて下さい」

「水月〜、どうしたの?」「ね〜、これから暇かな〜?」

「うん…孝之君はバイトだし…」「一緒に映画で見に行かない?」

「え!映画?」「そう。チケットが二枚あるから、一緒にどうかなーって思ってね」

「行こうかな〜…」「なら決まりね!じゃー…駅前で9時ね」「うん、判った」

電話を切って急いで着替えを済ませ、テーブルの上に『約束を忘れるなんて、サイテー!』

と書いたメモを置いて出かける。

駅前に着いたのは8時30分だったので、すこし本屋にの中をぶらぶらする。

あ、これね。前に遙が言ってた絵本って。どれどれ…

その絵本に引き込まれてしまい、約束の時間を大幅に過ぎてしまう。

慌てて本屋から出て遙を探していると、後ろから肩を叩かれたので振り返ってみると茜だった。

「茜ー!どうしたのこんなとこに?」「ごめんね、どうしても行くって聞かなかったの…」

あはははは…これでも姉なのかしら…。

「でも、茜〜。チケットは二枚しかないのよ」「自分で出しますから、大丈夫ですよ」

「どんな映画見に行くの?」「えーとこのチケットで、なんでも見れるみたいね」

「じゃー、あれにしましょう!」「あれ?」「あれって何?」

「夏にぴったりのものです!」「夏に…?」「ぴったり…?」

遙と一緒に首を傾げる。茜はそんなことは気にしないで、そのまま駅の中に入っていく。

電車を降りて、映画館の前に来て茜が一つの看板を指差す。

「これです!」「それって、ホラー…?」

「もちろんです!これを見たらきっと涼しくなりますよ!」

「私パス…」「え〜!何でですか?」

「茜〜、あのね…」

遙がなにやら茜に説明している。それを聞いた茜がにやーっと笑いがらこっちに来て

「さ〜行きましょ〜!」

そう言って、私の腕をグイグイっと引っ張る

「ちょっと、私は見ないわよ…」「大丈夫ですよ、これはコメディのですから」

「茜〜、ほかのだとだめなの?ほら、あそこの『おこじょさん危機一髪』なんて面白そうだよ」

「あれにしましょう!決定!」「水月先輩!これ以外だったら何でもいいんですか?」

黙って2、3回頷く。茜はそれを見てあたりを見渡して、一つの看板を指差す。

「あれなんかいいと思いますよ!」「どれ?」

茜が指差した先の看板に書かれているタイトルは『男と男の危ない関係』

遙はそのタイトルを見て、顔を真っ赤にする。

「茜…わざとね!」「ばれました…?」

「ね〜、遙はどれが見たいの?」

これで、まともなのが見れそうね。

遙は二つの看板を交互に見ている。遙が見ている看板のタイトルは『おこじょさん危機一髪!』と

『ETERNALファイト!』だ。

一つはさっき言ったものね。もう一つは、格闘系のやつね。

「こっちを見よう!」

遙が指差したのは、おこじょさん危機一髪だった。

茜はえ〜と言っていたが、無視して中に入る。中は以外にも込み合っていたが、何とか座ることができた。

茜は最初の方はいろいろと言っていたが、最後の方になると必死で見てた。

遙は言うまでもなく、悔いるように見ている。

見終わり出て時計を見てみると、ちょうどお昼だった。

「これからどうする?」「そうですね〜…」「あそこに行こうよ!」

「あそこ?」「もしかして、すかいてんぷるに?」

「うん!」「お兄ちゃんに会えるから〜ってことでしょ〜?」

遙は大きく驚いて、そのあと慌てて否定をするがもうすでに遅い。

判りやすい子よねー…。

「いらっしゃいませ〜、何名様ですか〜?」「3人だけど」

「ではこちらへどうぞ…」

席に案内され座って店内を見渡すと、お昼時なのにかなり空席があった。

今日ってそんなに暇なのかしら?

「いらっしゃい」「あ、孝之く〜ん…」「念願のお兄ちゃんに会えて良かったね!」「茜〜!」

孝之は何がなんだか判らないといった顔をしている。

「ご注文はお決まりでしょうか?」「私は、Aランチ!」「じゃー私は…Bランチ」

「私は…」「お姉ちゃんは、お兄ちゃんでしょ〜!」

二人は一瞬で顔を紅くして、そのあと遙は呟くように言う

「孝之君のお勧めで…」「かしこまりました」

しばらくすると裏の方から『お前なんか!猫のうんこ踏め〜!』が聞こえてくる。

今日は聞かないかと思ったけど、やっぱり聞こえてくるのね…。

しばらくして孝之が料理を運んでくる。

「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」

「何かあったんですか?」「え!ああ…、別に気にしなくていいよ」

たぶん、冷凍庫に閉じ込められてるわね。

「ね〜、茜」「なんですか?」

「茜ってここで、バイトしたことあるのよね〜?」「はい!」「私もあるよ」

「え!遙も…」「うん、とっても楽しかったよ!」

「毎日、お兄ちゃんに会えるから…でしょ?」「ち、違うよ〜…」

「はいはい…そうってことにしといてあげるね」「本当に違うんだよ…」

「もう判ったから、速く食べないとさめるわよ」「そうですね」「う〜…」

「茜もあんまり遙をからかわないこと!」「はーい…」

この二人は、どっちが姉なのか判らないわね

食べ終わりって、伝表を持ってレジに行こうとした時に、伝表が無いことに気が付く

あれ?置き忘れてたのかしら?

「孝之〜!」「どうした?」

「伝表が無いんだけど?」「ああ、今日は俺のおごりだ!」

「いいの?」「ああ…」「こら〜!そこ〜!サボってんじゃないわよ〜!」

「核弾頭が騒いでるから行くな。じゃあな」「うん、バイバイ…」

すかいてんぷるを出て電車に乗って家に帰る。

「これから、水月先輩の家に行ってもいいですか?」「え!な、何よーいきなり〜」

「茜は帰ったら、練習でしょ〜」「あ!そうだった」

茜は水泳やってるんだったわね。

「だったら、今度行ってもいいですか?」「いいわよ。でも、来る前に電話してね」

「はい!」

どうして、来たがるのかしら?別に変わらないのに…

電車を降りて茜と判れた後、遙と一緒に家に向かう。

「いいのかなー?私だけお邪魔して…」「いいのよ!茜は練習なんだから、仕方が無いわよ」

「そうだね…」

時計に目を落として時間を確かめる。

2時か〜。もうさすがに、起きてるよね。もし起きてなかったら、簀巻きにして吊るす!

「ただいま〜!」「お邪魔します…」「あ、お帰り〜。涼宮、久しぶり」

「うん、久しぶりだね…」「孝之は元気か?」「うん、元気だよ」

「今日の約束、覚えてる?」「え、約束?」

「そう!約束、どうせ覚えてないんでしょ!」「え、約束なんてあったの?ごめんね…」

「遙が誤ること無いわよー、覚えてない方がいけないんだから」「でも〜…」

「映画、楽しかったか?」「え!」

「最近、水月が元気ないって茜ちゃんに言ったら、こうしましょうってことになってな」

え、もしかして…これって二人の作戦だったの!?まさか、遙も知ってるんじゃあ…。

遙の方を見ると、遙は苦笑いをしている。

「も〜!そうならそうって、言ってよね!」「言ったら、秘密にならないだろ?」

「そうだよ〜。でもよかった〜」「え、何が?」

「確かにな、水月もいつもの水月に戻ってるな」「何よー、今までが私じゃないかったみたいな言い方ねー

「あれ?違ったのか?」「あんたねー!」

でも、今日は本当に楽しかったわね。今日は、ありがとうね。でも、これとあれは別問題よ!

通帳を取り出し、中を開けて目の前に突き出す。

「あんたでしょ〜!こんなになんに使ったのよー!」

「あ、それは…必要経費って言うかー…。あの、その…」


しばらくお待ちください…(ただいまボコボコにしています)


「私…帰るね…」「もう少し、ゆっくりしていけばいいのに〜…」

「またね…」

遙が帰ろうとする時に足を捕まれ、それに驚いた遙が手に持っていた鞄で一撃をくらわせる。

「ふんぎゃ…」

あ、とどめの一撃が入った…

「あ、ごめん…。いきなりだったから…」「大丈夫よ、それくらいで死んだりしないわよ!」

遙はすごく心配そうな顔をしながら見ている。

何がしたっかのかしら?それと、あれだけのお金を何に使ったのかしら?



「お兄ちゃんに、悪かったかな〜?でも、二人のためだもんね」

茜ちゃんの腕のドレップクスがキラリと光る

ーENDー



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