文化祭
「だろ…」「そうだな…」

孝之と楽しく話しをしていると、水月がやって来る

「孝之…呼んでるわよ」「またにかやったのか?」「ば、馬鹿な事を言うな!」「ほら、あそこ」

水月は教室の入り口の方を指差す

「あの…赤い髪の子よ」「知ってる奴か…?」「いや…全然…」

孝之は顔の前で手を横に振る

「とにかく!さっさと行きなさい!」

水月はそう言いながら、ビシッと赤毛の子を指差す

「判ったよ…ちょっと行って来る」

孝之はしぶしぶ立ち上がり、赤毛の子の所に行く

「なぁ、誰なんだ?あの子?」「あの子は、演劇部の部長よ」「ぶ、部長!」

部長が…孝之に何ようなんだ?

しばらく、孝之を眺めていると驚いた顔して、今度は笑って、最後は照れていた

いったい…何を話してんだ?

「きっと、今度の文化祭に関係があるんじゃない?」「何で?」「ほら、演劇部は毎年体育館で…」

「あー!なるほど!でも、それと孝之がどうしても、繋がらないんだが…」「私も…」

二人で考える


「孝之…さっきの子って、何の用事だったの?」「あー、あれか…」

孝之は嬉しそうに机から台本を取りだす

「出演依頼だったんだ」「へー凄いなー。で、何本目の木だ?それとも、通行人にAか?」

それを聞いて孝之はムッとする

「主役だよ!主役!」「な、何ー!」「た、孝之が主役!」

水月と一緒に、呆然と立ち尽くす

「何でも…相手役の子が、俺じゃないと嫌だって言い張ったんだってよ…」「それって…」

水月は何か言いかけて止める

「それで、何をするの?」「『ロミオ&ジュリエット』だってさ…」

だとすると…相手役のこと…

「孝之!その相手役の子を見に行こう!」「な、何だよ…突然!」「相手役の子は、孝之も気に入るわよ」

『え!?』

孝之と一緒に水月を見る

「水月…何で、そんな事が判るんだ?」「速瀬は、相手役の子と会ったことあるのか?」

「え!?何とく…そんな気がしただけよ…」

水月は慌てながらそう言う。孝之と俺は『怪しい…』と言った目で水月を見る

「さ、帰りましょ!」

水月は、俺の腕を引っ張りながら歩きだす


「孝之…うまくやってるかしら?」「そうだな…やってるんじゃないか?」

あれから数日が過ぎ、文化祭まであと一ヶ月になっていた

「ところで、水月は知ってただろ?」「え!?何が?」「相手役の子のことだ!」「何の事かしら…」

水月は惚けた顔で言う。そんな水月の顔をじーと見る

そんな時、学校の方から物凄い行き良いで、柔道部が走って来た

そして、俺と水月を抱えて学校へと戻って行く

「うわ〜!な、何だ?」「ちょ、ちょっと…何するのよ…」

抵抗もむなしく、そのまま体育館に連れて行かれる


「御待ちしていました」

演劇部の部長さんが丁寧に頭を下げる

「それで…俺達に何の用事なんだ?」「そうよ!つまらない用事だったら、ぶっ飛ばすわよ!」

「まぁ、少し落ち着いて下さい…。お二人を連れて来たのは、お願いあったからです」

「お願い…?」「私達に…?」「はい。そうなんです」

演劇部の部長はニッコリと笑う

「お二人に、今回の劇の主役をやって欲しいんです」「え!?」「今…何て言ったの?」「主役を…」

水月と顔を見合わせる

「俺達に…?」「私達に…?」「はい!そうです!」

水月と一緒にポカーンとその場に立ち尽くす

「驚かれたと思いますが、ぜひ宜しくお願いします」

演劇部の部長は深々と頭を下げる。ゆっくりと水月の方を見ると、水月は溜息をつきながら、肩を上がる

「一つ、聞いても良い?」「はい?何でしょうか?」「前に、主役をやるはずだった人はどうしたの?」

「それが…不慮の事故で…縁起が出来なくなったので…」

演劇部の部長は暗い顔をする

「何故か、俺達に白羽の矢が立ったって訳か?」「前の御二人の推薦で、決定させて貰いました」

推薦ねー。何も俺をしなくても…

「お願い…出来ませんか?」「仕方がないな。やってるやよ…」「私も、良いわよ」

それを聞いて、演劇部の部長は感激の涙を流す

「有難う御座います!有難う御座います!」

演劇部の部長は、そう言いながら何度も頭を下げる

「これが、劇の台本です」

台本の受け取り、パラパラと見てみる

「では早速…」「え!?もうやるのか?」「はい…時間がありませんから」

舞台に上がり、稽古を始める


「ふふふ…どうやら、うまく代役になっていただけた見たいですね」

そっと体育館を覗きながら不適に笑う

「あ、孝之ちゃん…待ててね。今から帰るから…」

ーENDー



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