悪夢
ゆっくりと目を開ける。するとそこは、何も無い真っ白な世界だった。

え…どうして何も無いの…?

白い靄がゆっくりと晴れ始め、見たことのある光景が目に入る

あ、ここは…駅前だ

駅前には、沢山の人達が集まって何かを見ている

何かあったのかなー?

しばらくそれを眺めていると、駅の方から孝之君が走って来る

『あ、孝之君だ…』

手を振るが孝之君はまったく気が付いてくれない

見えなかったのかなー?

孝之君は必死に人込みを掻き分ける。そんな孝之君のそばに行き声を掛ける

『孝之く〜ん!私はここだよ』

しかしその声は孝之君にはまったく届かない

え!?どうして?

そっと、孝之君に触れようとすると、すっと体を突き抜ける

え!?どうして…

何度やっても、雲を掴むみたいに触ることは出来ない

どうして…こんなに近くに居るのに、どうして…

その時、救急車に乗せられる人の姿が目に入る

え!?私…。じゃあここに居る私は…

目を開けてられない位の風が吹き抜ける。次に目を開けた時には、周りの景色は病院に一室になっていた

病院…?

孝之君は、ベットの脇に座り誰かの手を握りしめながら俯いてる

『孝之…君…』

そっと触ろうとするが、やはり触ることは出来ない

「遙…遙…」

孝之はそう呟き続ける。ゆっくりとベットの方を見てみると、そこには私が寝ていた

え!?私…どうしたの?

病室のドアが開き、水月が入って来る

「孝之…遙はまだ…」

孝之君は水月の問いかけに何も答えなかった

水月は寝たままの私に近づき、そっと髪を触る

「遙…何をやってるのよ。孝之に心配掛けてどうするのよ…」

水月の目から大粒の涙が零れ落ちる

水月…

『水月…私はここだよ。涼宮遙はここに居るよ!』

でも、その言葉も水月には届かなかった

私どうしちゃったの…誰か教えて〜!


目を開けると、眩しい光が目に入って来る

「あ、目が覚めたんだ…。先生を呼んでくるね」

茜は病室から出て行く

夢…だったの?

しばらくして茜が帰ってくる

「どうしたの?何か怖い夢でも見たの?」「う、うん…私がずっとベットで寝てて、その横で孝之君が…」

茜は一瞬驚いた顔をするが、すぐに何時もの顔に戻る。病室のドアが開き孝之君が入って来る

「よう!遙。どうした?顔色が悪いぞ…」「孝之君…」

真剣な顔で孝之君の顔を見る

「どうした?」「お姉ちゃん。怖い夢をみたそうなんです」「そうなのか?」「うん…私がずっと…」

その時病室のドアが開き、香月先生が入って来る

「それじゃ。またあとでな」「うん…」

やっぱり、皆…何か隠してる。でも、どうして?何で教えてくれないの…?

その後高熱をだして、その出来事は記憶が消えてなくなった…

ーENDー



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