憧れの人
はー、水月先輩…。

生徒手帳に入った写真を見ながらポーとする。

やっぱり…水月先輩って、す・て・き!

トントン…

肩を叩かれ、我に帰る

「何をしてるの?」「え、あ、わー!穂村さん…」

慌てて、生徒手帳を隠す。穂村さんは、不思議そうな顔で首を傾げる

「次は、教室移動ですよ」「あ、有難う…」「いえ…」

穂村さんはニッコリと笑う

「一緒に行きましょうか?」「うん♪」

必要な物を持って、穂村さんと一緒に教室から出る


昼のチャイムが鳴り響く。鞄から、お弁当の包みを取りだして、とある場所に走って行く

「ふへ〜」「何をへばってるのよ?はい。遙から、預かり物」「悪いな…」

「遙も、何時になったら自分で渡せるのかしら?」「水月…先輩ー!」

そう言って、水月先輩に飛びつく

ガシャン!

「キャー!」「おーい、生きてるかー?」「あいたたた…」「水月先輩。一緒に食べましょ?」

ニコニコ笑いながら、お弁当を見せる

「一緒に食べてやれよ。可愛い後輩の頼みぜ!」「あのねー」「あ、一緒に良いですか?」

「え!?あ、ああ…」

水月先輩の同級生の男の人は、驚いた顔で頷く。開いている椅子を引っ張って来る

「さ、水月先輩はここに。私は、ここ」

当然のことながら、水月先輩のすぐ側に座る

「水月先輩と一緒に、お昼が食べるなんて…夢みたいです」

『おい…この子って誰だよ?』『私の水泳部の後輩の子なの。でもね、能天気っていうか、自己中心的っていうか…』

「水月先輩は、食べないんですか?」「え!?もちろん、食べるわよ…」

水月先輩は苦笑いを浮かべながら、弁当箱を取りだす

「うわー!さすが、水月先輩ですね。これって、手作りですか?」「まあね…」「凄いですねー」

そう言いながら、卵焼きを摘む

「うーん!美味しい…」

万年の笑みで言う

「こいつのとりえは、水泳と料理だけ…」

みし!

水月先輩の拳が、顔面を捉える

「誰が、水泳と料理だけですってー!」「悪い…格闘技を忘れてた…」「まだ言うかー!」

それを見て、一人でクスクスと笑う

「ちょっと、何笑ってるの?」「お二人って、凄く仲が良いんですね。まるで、恋人同士みたい」

それを聞いた、水月先輩達はボッと顔を紅くする

「あ!言っときますけど。水月先輩の恋人は、私ですからー」

そう言って、水月先輩の腕に絡みつく

「ほー、速瀬はそっち系だったのかー」「ちょっと!何を言ってるのよ。これは…」

「私、水月先輩の事がだーい好きです!」「ほー、相思相愛って奴だな」「勝手に納得しないで!」

「水月先輩は、私の事が…嫌いらいですか?」

つぶらな瞳で水月先輩を見る。

「そ、それは…」「どうするんだ?彼女が困ってるぞー!」

水月先輩は回答に困った顔をする

「やっぱり、嫌いなんですね…」

そう言って、少し下を向く

「誰も…嫌いだ何て言ってないでしょ?」「好きなんだな?」「あんたは黙ってなさい!」

水月先輩は鋭い目付きで、男の人を睨みつける

「あのね…別に、嫌いって訳じゃないから…安心して…」「本当ですか?」

笑顔でそう言う

「やっぱり!水月先輩も、私の事が好きだったんだー。嬉しい…」

そう言って、水月先輩の腕に笑顔で絡みつく

「良かったなー。好きだってよー!」「はい♪」「孝之…遺書を書いときなさいよ!」

チャイムが鳴る

「あ、私はこれで失礼しますね」

手早く、お弁当を片付けて教室から出る。教室までの帰り道は、嬉しさのあまりスキップをしながら帰る

「スキップなんて、してるぞ」「そう…それは良かったわねー!」

ボキボキ…

「孝之…覚悟は良いでしょうねー?」「ま、まて…水月…」「問答…無用!」「アンガチョー!」

水月先輩。これから、少しずつお互いの距離を縮めましょうね

ーENDー



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