愛恋弁当
あれ? あそこに居るのって…遙じゃない。何をしてるのかしら?

遙は、私の教室の入り口で不信な行動をとっている。

何をやってるのかしら?

物陰からこっそりとその行動を監視する。遙は、教室のドアに手を伸ばすが、すぐに引っ込める。

これで何回目かしら? それにしても、何をやってるのかしら?

そっと遙の後ろに近づき、飛びつく。

「は・る・か…」「キャ!」「いったい何をやってるのかしら〜?」「え!? な、何でも無いよ…」

慌てて教室に帰ろうとする遙の肩を掴んで、自分の方に向かせる。

「何をやってたの〜?」「えっと…えっと…あのね…」

遙は紅い顔で慌てふためく。遙の手に何か持っている事に気がつく。

「遙〜! な〜に? その手に持ってるのわ?」「え、あ!」

遙は慌てて後ろに隠すし、苦笑いを浮かべる。

「今何を隠したの?」「な、何でも無いよ…」「良いから見せない!」

遙から後ろに隠した物を取り上げる。

「お弁当…?」「もう良いでしょ? 返して…」

遙は急いで弁当包みを取る。

遙がお弁当を持って、居室の前に居る。まだ、お昼じゃないし…だとすと…。

ニヤリ!

「遙! それ、孝之のために作ってきたんでしょ〜?」「え! ち、ちがうよ…」

「じゃあ、誰のためー?」「えっと…えっと…」

遙が必至に言い訳を考えている間に、教室の中に居る孝之に声をかける。

「孝之〜! 遙が用事があるんだって!」

遙は、私を引っ張って屋上まで連れて行く。

「な、何だ…? 遙って結構…力あるんだな…」


「酷いよ…水月…」「御免…」

遙に手を合わせて誤る。

「孝之に何時渡すの? その愛妻弁当!」「え!?」「愛妻じゃなくって、愛恋弁当ね!」

遙はボッと顔を紅くする。遙の前に手をだす。

「水月…?」「私が変わりに渡してあげるわよ…」「ううん。私が渡す!」「そう、じゃあ行きましょ!」


「ほら、遙…」「う、うん…」

遙はゆっくりとドアに近づいて行く。その時、突然ドアが開き、孝之が出てくる。

「お、遙じゃないか。どうしたんだ? こんな所で?」「あの…あの…」

遙! ファイト!

物陰に隠れながら声援を送る。

「やっぱり、ダメー!」

遙は走って教室に戻ってしまう。

もう…何やってるのよ!

結局、遙の愛恋弁当は私の手から孝之に渡った。

ーENDー



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