80,000HIT記念品 |
店に入るなり、永遠はどこかに行ってしまった。みなもはもちろん俺のズボンを掴んでいる。 ショッピングカートを御そうとした時に、クイクイっと引っ張られる。 「どうした?」 みなもは俺の顔をじっと見て言う。 「押してもいい?」「ちょっと無理かもな…」 「できるもん!」 そう言って、みなもはカートを押して走って行く。それを慌てて追いかけ、何とか捕まえた。 「判ったから、押していいよ」「やったー!」 そう言ってまた走り出そうとしたので、慌てて止める。 それから、二人で買い物をしていると肩を叩かれた。誰だっと思って振り返ると孝之だった。 「よ〜!元気か?」「ああ、おかげさまで」 しばらく話をしたあと、みなもを紹介する。 「よろしくね。みなもちゃん」 みなもは俺の足の影に隠れる。孝之の足の影に小さい茜ちゃんが目に入った。 「その子は?」「ああ、この子は真琴ちゃんさ〜」 「茜ちゃんにそっくりだけど、もしかして…」「そうだ、茜ちゃんの子供さ〜」 「やっぱりな」「パパ〜!」 向こうから、小さな女子が走ってくる。途中で見事に転んだが、すぐに立ち上がってまた走ってくる。 「紹介するな、これが俺の娘の恵だ」「みなも、恵ちゃんだぞ」 みなもは俺の足の影からチラッと顔を出す、恵ちゃんはそれを見てトコトコとみなもの所に やってくる。そして、すっとみなもの手を引っ張って行ってしまう。 「大丈夫なのか?」「大丈夫だって」 本当に、大丈夫なのか? 「それより、そのおもちゃの山はどうしたんだ?」「え!」 カートを見てみると、確かに山のようにおもちゃが積んであった。 側を見ると、永遠がそーっと逃げようとしていたので捕まえる。 「これが、もう一人の子供の永遠だ」 襟を持って、孝之の前に差し出す。 「お前にそっくりで、いたずら好きなんだな〜」「こいつとは違う!」 「ところで、なんで茜ちゃんの子供を預かってるんだ?」「それはだな〜…」 孝之の説明によると、親戚の人の結婚式に呼ばれてそれで子供を預かったらしい。 「な〜、今日うちに来ないか?」「え!」 「男一人だと何かと大変だろう。それに、子供たちも遊べていいだろう」 「そうだな…お言葉に甘えさせて貰うよ。真琴ちゃんも行くだろ?」 真琴は黙って頷く。 「水月に連絡してみるな」「そうだな」 携帯を取り出して、水月に電話をする。二人はお菓子を抱えて帰ってくる。 一生懸命返して来いと、体で表す。孝之がいいじゃないかーっと肩をたたかく。 「どうしたの?」「今、大丈夫か?」 「うん、別にいいわよ。何か用事?」「今日さー、孝之が来ることになったから」 「え、孝之!」「変わるな」 そう言って、孝之に携帯を渡す。お菓子の山を眺めてため息をつく。 これはいいとして… 「永遠!これを戻して来い!」「え〜!どうして〜…」 こんなに買って帰ったら、俺が水月に殺される… 「いいから!」「ぶ〜!」 永遠はしぶしぶ戻しに行く。そして、孝之から携帯を受け取る 「なんか頼みたいことがあるって」「そうかー」 「もしもし…」「ね〜、今から言う物を買って来くれる?」 「何を買っていけばいいんだ?」「えーっとね〜…」 水月が言うものを探して、買う。孝之がそれを見て、一瞬で顔色が変わる。 「どうした?」「いや、これって…カレーの材料だろ…」 孝之と顔を見合わせる。そして、二人で笑う。 「とりあえず、買って帰らないとあとが怖いな…」「そうだな…」 孝之と一緒に家に帰る。玄関の所に行くと、水月が走ってきた。 「買ってきてくれた?」「ほら、これだろ?」 「有難うね」「もしかして今日って…カレーか?」 「そうよ。美味しいの作るからね」 水月は張り切って台所に消えて行く。クイクイっとズボンが引っ張れる。 「どうした?」「今日って…あれなの〜…」 「そうらしい…」「やだよ〜…」 「お母さんにそれを言えるか?」「……」 みなもは首を横に振る。それに引き換え、永遠はすごく喜んでいる。 孝之と茶の間で、テレビを見ている時に袖が引っ張られた。みなもだろうと見てみると、 恵ちゃんだった。 「どうしたの?」「……」 恵は黙って、机の上のお菓子の入った入れ物を指差す。もしかして…。 それをとってあげると、中ならいもきんつばを取り食べ始める。それを見て孝之に小声で聞いてみる。 「もしかして…大好きなのか?いもんきんつば…」「そうだ!変なところが似てるだろ〜」 「そうだな…。姿だけじゃないんだな」「そうだな」 恵ちゃんは食べ終わって、じっと残りの見つめている。何も言わずに取ってやるとすごく嬉しそうな 顔をする。本当に好きなのだろう。 「真琴ちゃんは?」「あ〜、それならみなもちゃん達と部屋に入っていったぞ」 「それにしても、みなもちゃんは水月にそっくりだな。特にあのポニーテルなんかそのままだもんな」 「外見だけじゃないぞ!中身もまったく同じだ」「そうなのか〜」「そうだ」 いもきんつばを取ってやりながら言う。しかし、よく食べるなー。 「出来たわよ〜!」 俺と孝之は顔を見合わせて、二人とも『ついに来てしまった…』といった顔をする。 俺と孝之は『生きて生還しよう』とお互いに頷く。恵はまだ食べている。 仕方が無いので、そのまま連れて行く。そして、目の前にアレが置かれる。 見た目は普通と変わらないのだが… 「さ〜!たくさんあるから、頑張って食べてね〜!」 水月はすごく嬉しそうだ。これだけたくさんの人に食べて貰えるのだから、当たり前だ。 決死の思い出カレーを食べる |
ー90,000HIT記念に続くー |