「水月ー」「なあに…?」「今日の夕食は何だ?」「『なし』よ!」「え!?」
水月の返答に目をパチクリさせる。偶然通りがかった雪さんを捕まえて聞いてみる
「はい。本日は『なし』ですよ」「やっぱりか〜」「どうしたんですか?」「いや…気にしないでくれ…」
「はぁ…」
雪さんは不思議そうに首を傾げる
出かけようとした時、水月に呼び止められる
「あら。どこかに行くの?」「飯を食いに行くんだよ…」「どうして…?」
水月はキョトンとした顔をする
「だって、今日は『なし』何だろ?」
水月はプッと笑う
「まさか、なしって無いってことだと思ってるの?」「え!?違うのか…?」
「ふふふ…今日は梨よ『梨』」「梨〜!」「そうよ…」
何だー梨かー。梨……
「えー!」「な、何よ…いきなり大声出して?」「俺…外で食べてくるから…」
そういって出て行こうとした時、水月に肩をつかまれる
「ご飯は家にあるでしょ?だから、わざわざ食べに行く必要ないでしょ?」
水月はにっこりと笑うが、手にはグッと力がはっており、骨が折れる位の痛みを感じる
「は、はい…」「もう少し待てて、すぐにできるはずだから」
俺の前には、梨ご飯、梨の味噌汁、梨の漬物…など梨を使った物が並ぶ
「それから…特別にこれよ」
特別って何だろ?
水月が置いたのは、紛れもなく玉葱と人参と芋と肉が入ったアレである
「普通は、りんごを使うんだけど。今日は少し志向を変えて梨を使ってみたの。どうかしら?」
確かに…俺は、辛い物には免疫ができてるが…これだけは別物だぞ…絶対に
ちらりと水月の方を見ると、ワクワクした顔でこっちを見る。仕方が無くそれを一口食べてみるがやっぱり辛く、後ろにぶっ倒れる
「大丈夫ですか…?」「俺…生きてるの?」「雪は天使ではありませんよ」
雪さんはそういってニッコリと笑う
「でも、雪さんの天使なら会いたいなー。きっと可愛いだろうなー」
それを聞いた雪さんは白い顔を紅くするする
「雪の天使など…可愛くありませんから…」「そうか…俺は可愛いと思うけど…」
そういって笑うと、雪さんは嬉そうな顔をする
「少し…お待ち下さい…」「え!?雪さん…?」
雪さんは慌てて部屋から出て行き、しばらくして戻って来る
雪さんは恥ずかしそうに顔を紅くする。戻って来た雪さんはどこから持ち出したのか、天使の格好をしている
「お恥ずかしいのですが…いかがでしょうか?」
呆然と雪さんを眺める
「あの…」「え!?」「やっぱり…似合いませんか?」
雪さんは心配そうに聞いて来る。その問いかけに首を横に振って答える
「雪さん…起きた?」「み、水月〜!」
ドアがゆっくりと開き、惨劇が幕を開けるのであった
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