誕生日
やべ〜!遅くなっちまった!蛍…怒ってるだろうなー

そんな事を考えながら走る

だいたい、大空寺の奴がいけないんだ!


「おいコラ!あに勝手に帰ろうとしてるのさ?」「お前には関係ない!店長、失礼します」

「はい。お疲れ様です」

えっと…今から行けば、まだ間に合うな!

「待てや〜!」

ビュ!ヒョイ!

「うがああぁぁぁ…避けるなボケ〜!」

むちゃくちゃ言ってやがる…。あ、そうだ!馬鹿はほっといて行くか

「待てや!」「まだ何かあるのか?俺は忙しいんだ!これ以上、俺に付きまとうな!」

「誰がお前なんかに付きまとうか!ボケ〜!」「そうかい!それじゃ〜な!」

あ〜!完全に遅刻だ〜!


えっと…待ち合わせはこの辺だったはずなんだが…

『だから、私は大人なんです!』

お!あそこだな

「蛍…」「あ、鳴海さん…。鳴海さんからも言って下さい。私が大人だって…」

「君…ちょっと来なさい!」「え!?あの…ちょっと…」「鳴海さ〜ん…」


何で…俺が変質者なんだよ〜。

しくしく…

「すみませんでした…。私の…」

蛍の頭にポンと手を置く

「気にするなって…」「ちょっと…君!」

またですか〜

「これを忘れて行ったぞ!」

警官は俺の財布を差しだす

「あ、すみません…。有難う御座います」

警官から財布を受け取る

「それでは、本官これで!」「鳴海さん…」「そうだな…誰も居ない所に行こうか…」

二人で歩いて、海が見える公園に行ってベンチに座る

「ここだったら、安心だな…あ!」

周りでは、カップルが楽しんでいた

「ば、場所…変えようか…」「ここで良いです…」「あ、そう…」

さて…あれを何時、渡すかが問題だな

「鳴海さん…」「ん…?どうした?」「あの…その…」

蛍は紅い顔でもじもじする。そして、小さな声で呟く『キス…して下さい…』と

黙って頷くと、蛍は目を瞑る。そっと、蛍の顔に手をそえて顔を近づけて行き、キスをする

「そうだ…蛍に渡す物があったんだ…」「え!?何ですか?」

ポケットから、小さな箱を取りだして、蛍の前に差しだす

「お誕生日…おめでとう!」

蛍の目から涙が零れ落ちる

「有難う御座います…」「それから…結婚しよう…」

そう言って箱を開ける

「鳴海…さん…」

蛍は泣きながら俺の抱きついて来る。そんな蛍の頭をそっと撫でてやる


「先生…何をなさってるんですか?」「ん…?」

小さな箱を引き出しにしまい、看護婦の方を向く

「何か用事?」「はい、患者さんがお見えになったので…」「じゃぁ通して…」「はい!」

蛍が死に、俺は蛍みたいな人を一人でも多く助けたく、医者になった。

引出しには、絶対に渡すことの出来ない指輪と蛍から貰った石が入っている

蛍は、俺の心の中で生きている。だからこそ、俺はこうして居られるんだから…

『孝之さん…』

ーENDー

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