恩返しなの? 第二章
「馬鹿!何を考えてるのよ!」

そう叫びながら頬を平手で叩く。キッとこっちを睨み付ける

「俺のせいで…俺のせいで…父さんと母さんは死んだ!」「馬鹿!自分だけが悪いみたいな言い方をしないで!」

「だったら、どうしたら良いか教えてよ…。知ってるんだよね…どうしたら良いか…」

黙って優しく抱きしめてあげる

「私だって…聞いた時は、どうしようって思ったわよ…」

頬を伝って涙が零れ落ちる

「でもね…私は、嬉しいの…」「嬉しい…ふざけるな!父さんと母さんは…」

ぎゅっと抱きしめる

「父さんと母さんが死んだのは、確かに辛いわよ…。でも、今こうしてあんたを抱きしめられる…。私はそれだけで十分…」

「ね、姉さん…」「だから、死のうなんて思わないで…。これ以上、私を悲しませないで…」


「あ〜!またここにいらしたんですねー」

屋上のドアの所に、肩で息をしている看護師さんが立っている

「あら、良くここだってわかったわね〜」

白衣を着た人は実に楽しそうにそう返す

「よっと!そんな訳で、これで失礼するわね」「先生!」「はいはい…。馬鹿な弟だけど…宜しくね…」「え!?」

「先生!」「今行くわよ〜。そんなに青筋ばかり立ててると、血管が…」「良いから来て下さい!」


「潜入成功!Vサイン〜♪」

そっとベットへ近づいて行き、寝ている人物の顔を眺める

「今、あの時の恩を返すのだ〜!」

そう叫び、顔を近付ける


手探りで、目覚ましを探してぶん投げる。静かになったので再度、眠り落ちる…

「とりゃ〜!朝だぞ〜!ほれ〜ゴロゴロ〜ゴロゴロ〜」

ムカッときたので、布団ごと弾き飛ばす

「にゃははは…おっはよ〜」「てめぇは、朝からテンション高過ぎだって…。それから、出てけ…」「了解しました。隊長!」

「お前は、いったい何時の時代の人間だ?」

そう呟いたあと、出かかける準備を始める。忘れずに帽子をかぶって外へと出る


「あ、もう居たんだ〜」「お前が遅いだけだろ?」「え〜集合の十分前よ〜。それで遅いって〜」

「うるせ〜!一人でほざいてろ…」「ぶーぶー」

奈美は一人で騒ぎ続ける。

「遅くなってごめん…。あ!」

亜紀は一生懸命に走ってこっちに来ようとした時、躓いて転びそうなる。そんな亜紀を受け止めてやる

「大丈夫か?」「う、うん…。有難う…」

亜紀はほんのりと顔を赤くしながら頷く

「おやおや〜?お二人に何かあったのかな〜?」「うるせ〜!引っ込んでろ!」「ムキになるってことは〜」

奈美は含み笑いを浮かべる

「殺すぞ!」「ん〜?昔はあんなに嫌がってた帽子をかぶってるなんて…珍しいわね〜」

その声を聞いた瞬間、背筋がゾッとする。そして、姉貴がまとわりついてくる

「離れろ…」「あら〜?どうして〜?昔は、お姉ちゃん…」「それ以上のことを言ったらぶっ殺す!」

「わたし聞きたい〜♪」「実に興味深いわね〜。明日の一面かしらね〜」「お前らまとめて殺す!」

「それより〜。この帽子の下はどうなってんの〜?」

姉貴はヒョイと帽子を取り上げる

「あ〜!」「にゃは!」「わぉ!」「あ…」

頭の上に見事なまでの犬耳が存在し、皆はそれを見てしばらく硬直した後、笑い始める。二人を除いては

「キャハハハ…。い、犬耳って…何の冗談よ〜」「そんなわけがあったのね〜。さすがの姉でもね〜アハハハ…」

「お前ら…二人共…ぶっ殺す!」

姉貴と奈美は笑いながらその場から逃げ出す

「待てコラー!」「あれ…どうして?」「それは、わたしの生命力を分け与えたらからだよ〜」

亜紀は何となく納得する

「殺す〜!」「キャ〜人殺し〜♪」「助けて〜♪」

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