恩返しなの? 第二章 |
「さー脱いでくれ」「え!?」 ニヤリと笑う 「教室で、俺の事を何て呼んだか覚えてるよな〜?」「ご、ご主人様…」 制服に掴む 「そう…だから、俺の言うことは絶対なんだよ〜!」 ニヤーと笑い、一気に… スパン! 「あいた…」「てめぇは何を勝手に語ってる!」「痛いでしょう!」「煩い!黙れ!それとも…もう一回いっとく?」 お盆を振り上げる 「いえ…結構です」 二人の前に、ホットミルクとカフェオレを置く 「ねぇねぇ…屋上で何をしてたの?やっぱり…」「いい加減にしろ、じゃないと張った倒すぞ!」 「やーん…倒すだなんて〜。だ・い・た・ん…」 奈美はクネクネと体をよじらせる。それを見て、首を絞める 「ぐ…ぐるじぃ…」「そのまま死ね!」 クイクイ 「あん?」「おかわり頂戴…」 こっちに向かって笑顔をなげかけてくる。パッと手を離し、ホットミルクを作ってやる 「ほらよ…」「ありがと〜♪」「ゲホゲホ…この殺人鬼!」 奈美は、獣が警戒する時に出すような声で唸りながらこっちを見る 「お前は、殺してもそのまま起き上がるだろうがー」「私は、ゾンビか!」 「ほ〜。違うって言うのか?なら、小学校の屋上から飛び降りて、無傷だったのはどう説明するんだ?ん〜?」 奈美は、うがっと二・三歩後ろに下がる 「ふん…そんな昔のこと、忘れてたわ…」「バカバカしい…。さっさと帰れ!」 ビシッと玄関を指差す。それを見た、奈美は座ってカフェオレを飲み始める 「帰れ!」 奈美の襟を掴んで、強制的に連衡しようとするが、柱にしがみ付く。 「嫌だ〜。屋上であった真相を聞かせて〜」「それ聞いたら、帰るか?」「え!?聞かせてくれるの?」 奈美は目を輝かせる。それを見て、はぁっと溜息をつく 「聞かないと帰らないんだろ?」「当然!そのために、ここに居るんだから!」 奈美は胸を張る。再度溜息をついてあきれ返る 二人を座らせ、ココアをいれる。 「だせ!」「え!?何をかな〜?」 奈美はとぼけた顔をする。ピクッと繭を動かす 「そのレコーダーだ!どうせ…録音しようとしてたんだろうが…」「え〜良いじゃない〜」 キッと睨みつけると、奈美は渋々渡す。それを受け取ってため息をつく 「これで話せるな。えっとな…」 プルルル…プルルル… 「鳴ってますよ…」「鳴ってるわね〜」「だ〜!もしもし…あ〜?家は蕎麦屋じゃない!」 受話器を叩きつける。その後も、話し始めようとすると、タイミング良く電話が鳴る。しかも、同じ人からだからなおさらイラつく 「今度はなんだ?え〜!」「あ…ご、御免なさい…」 受話器から聞きなれた声が聞こえてくる 「え!?お、おばさん?麻弓おばさん?」『え、ええ…御免なさい。何だか…取り込んでる時に…』 「気にしなくて良いって。で、何か用事か?」『ええ…亜紀を知らないかしら?』「ん…?亜紀がどうかしたのか?」 『まだ帰ってこないのよ…』 ちらりとテレビ上の置時計を見ると、19時をまわっている 「友達と何かしてんじゃないか?」『そうよね…でもね。あの子は、遅くなる時は電話してくれのよ…。あの子に何かったら…私…私…』 亜紀はおばさんと二人暮らしで、おばさんにとって亜紀は唯一の肉親である 「わかったよ。少し探してみるよ」『御免なさいね…。本当だったら、私が…』 「良いって、気にするなって。仕事頑張れよ」『亜紀のことお願いね』 受話器を置き、携帯と財布を手に取る 「そんなわけで出かける」「あ、コラ…話はどうなったのよ〜」「話…そいつにでも聞いてとけ!じゃあな」 家から出て、まず最初に駅前に向かって走りだす 駅前に着き、しばらくあたりを捜索するがそれらしい人影は無く、途方にくれる 「畜生!どこに居るんだよ〜」 そう叫びながらベンチに座るり、何気なく空を見上げる 空か… ブランコしか無い小さな公園… 『馬鹿やろう!何時まで泣いてんだ〜!』『だって…だって…』『泣いたって、無駄なんだぞ…』 『でも…でも…』『もうかってにしてろ!』『待ってよ…』『何だよ?』『一人はいや…』 『だったら、泣くのをやめろよ…だったら、一緒に居てやる…』『う、うん…』『ほら…』 ポケットからキャンディーを取り出して、手の上にのせてやる。 『親父とおじさんは、あの向こうに居ちゃったんだってさ…』『お空に…?』 『うん…おばさんがそう言ってた…』 もしかして…あそこか? ベントから立ち上がり、一目散に公園に向かって走りだす 予想通り、亜紀はブランコにすわっていた 「亜紀!」 亜紀はビクッとし、おびえた顔でこっちを見る。亜紀の服がボロボロだってことにその時初めて気が付く 「亜紀…おばさんが心配してるぞ…。帰るぞ」 亜紀は、そういって差し出した俺の手をはらいのけ、公園の出口に向かって走り出す その後を急ぎ足で追いかけている時、交差点からこっちに曲がって来るトラックが目に入る 「このままだと、鉢合わせだ…」 走って亜紀を追いかける。予想通り、亜紀が公園の出口からを出た瞬間に鉢合わせする 亜紀は身動きひとつせずにじっと、迫り来るトラックを見る 「亜紀〜!」 と叫びながら亜紀に向かって飛び掛り、亜紀を押しとばす 次に気が付いた時は、自分で自分を見下ろしている状態だった 『ねぇ…起きてよ…』 亜紀が必死になって俺の体をゆすっているが、俺はピクリとも動かない 『どうして…どうして…』 しばらくして、救急車がやって来て俺を連れて行く。その光景をただ見ていることしか出来なかった 『早まるな!考え直せ!人生はまだ…』など書かれた看板がついた柵を乗り越える ゆっくりと下を見下ろすと、下を歩いている人が小さく感じれる。その時、自分がどんな所にたっているかを実感する ゆっくりと目を閉じ、少しずつ体を前に向かって倒して行く。あとは重力にこの身を任せるだけ…と心の中で呟く その瞬間、がっと肩を掴まれて引き戻される 「まったく、何も考えないでそんなことをしようとするかしらねー。病院の評判も考えてほしいわね」 声がした方をゆっくりと見上げる。そこには、白衣を着た女性が立って居て、やれやれと頭をかいている 見られている事に気がつくと、不適に笑いってこっちを睨み付ける 「あんた!今…物凄く大変なことをしようとしてたのよ!わかる?」 すごい剣幕で詰め寄ってくる。それに対し、愛想笑いを浮かべるだけで手一杯になる 白衣を着た人は、懐に手を入れる。私は、勝手に煙草を取り出すのだ思っていると 「やっぱり、口が寂しいのよね〜」 懐から取りだした棒の先に飴がついた物を口に放り込む 「ん?もしかして、煙草でも吸うと思った?」 そういってにかっと笑う 「い…いえ…」 「まぁ…昔は吸ってたんだけどねー。身内にとめられたのよ…。医者がそんな不健康な物を吸うんじゃないってね」 「は…はぁ…」「ん〜?どうした〜?さっきまで死のうってして奴の顔じゃないぞ〜」 ニヤニヤと笑いながら私の方を見る。そして、空を見上げてため息をつく 「こうして、助けたのは二人目ね〜。あの時は、まさかと思ったけどね…」 そう呟くと、寂しそうな目をする 「あの時は…本当だったら…私が…」 |