恋人はニャンコ!?

鼻歌交じりに、テンポよく料理を作ってゆく。そんな私の足元に、一匹の猫がじっと私を見上げている

料理の手を止め、しゃがみこむ

「待ててね〜。もう少しだからね」「にゃ〜」

短く鳴いた後、一人で居間まで歩いて行く。それを確認し、料理を続きをする

こうして、暮らし始めてどれ位なるかなー?あの時は、本当に信じられなかったなー


仕事に疲れて帰って来ると、玄関の前に一匹の猫がこっちを見ながら座っている

猫…? 何で家の前に…?

そんなことを考えていると、猫は急に走り出して私に飛びついて来る

「キャッ!」

驚いた拍子に尻餅をつく。猫はじっとこっちを見た後、パタッと倒れる

「え!?猫ちゃん…だ、大丈夫…」

そっと、猫を触ると微かにだが呼吸をしていたので、急いで家に連れて帰る


でも…どうして家の前なんかに居たの?

「どこから来たの〜?」

そういって、猫の鼻先を軽く突っつく。猫は、少し悶えるように動き、ゆっくりと目を開ける

「良かった〜。大丈夫?」

猫は言葉が理解できるのか、ゆっくりと頷く

「そう…良かったわ。倒れた時は、どうしようか思ったけど…」

優しく猫の頭を撫でてあげると、気持ち良さそうな顔をする。それを見て、自然と笑みがこぼれる


翌日…


目を覚ますと、猫は一枚の写真前でじっと何かを見ていた

「おはよう…」

猫は、その声に反応してこっちを向く

「どうしたの?あ、その写真は…。良く取れてるでしょ?私の彼よ。わかる?」

笑いながら、写真を猫に見せる。猫は、真剣な顔で写真を睨みつける

「もしかし…気に入らなかった?御免ね…」

そういって写真を伏せて置き、猫を抱えあげる

「あなたは、どこから来たかな〜?」

そう問いかけながら首を傾ける

ビー!

「誰だろ…?」

玄関に行き、除き穴から外を見ると、黒服の男が沢山立っているのが見える

え!?私…何かしたの?何もしてないわよね〜?

真剣に心当たりが無いか、考えている時に猫が現れて短く鳴いて、じっとこっちを見る

その目は、開けても大丈夫と言っている気がしる。ドアを開けると、黒服で恐持てのスキンヘッドの人が入って来る

「岬奈々さんですね?」「は、はい…。でも、私は何も…」

スキンヘッドは優しく微笑む

「大丈夫です。私達は、怪しい者ではありませんから」「そ、そういう人が…」

スキンヘッドはスッと、黒い手帳のような物を取り出して私に見せる

「私達は、SKです」「SK…?」

わけがわからず、ただポカーンとする

「斉藤さん。これを…」「うむ…」

別の黒服の男が猫を抱え上げ、スキンヘッドに渡す

「その猫には、何の関係も…」「この猫は、重要な人物なんですよ」「え…」

頭の中が混乱し、何が何だかわからなくなってゆく

「とにかく、私達と一緒に来て下さい」「は、はい…」

言われるがまま、リムジンに乗せられる

「飲みもは?」

その問い掛けに首を横に振る

「そうですか…」「あの…猫が重要って…」「実は…あの猫は、私達の仲間なんですよ」「な、仲間…でうすか?」

スキンヘッドは黙って頷く

「今は、猫の姿をしていますが、元は人間なんです…」「え…」

ポカーン

「彼というのは、コードネームバード…。またの名を矢島真一です…」「え…えぇ〜!」

思わず大声で叫ぶ

「驚かれましたか?」「だ、だって…彼は、保険会社の一社員じゃぁ…」

そうよ。だって、彼の会社だって存在するし、昼休みに会ったり

「混乱するのは、わかります。私達は、決して正体を悟られてはいけないのです

架空の人物を作り、その人になりすますのです」

「じゃぁ…私の知っている彼は…」「あなたが知っている彼も彼です」「でも…」

混乱する私を乗せたリムジンは、地下へと降りてゆく

「もうじき、我々の基地に着きます。そこでは、バードを戻すための準備が整っていますので、安心して下さい」

「じゃぁ…元に戻るんですね?」「はい。大丈夫です」

それを聞いてほっと肩を撫で下ろし、外を見る。そこは、見たこともない世界が広がる

「ここは、世界の最新鋭の技術を結集し創設された物です」

リムジンは、そんな中を抜けて、仁基は高い建物の前で止まる。

リムジンが止まる同時に、白衣の集団が駆け寄って来て、猫を連れて行く

「もう、大丈夫です。彼等に任せておけば、大丈夫です。中で、私達の活動について説明しましょう」「あ…はい…」

大きな建物の中に入る。応接間に通され、コーヒーが出てくる

「どうぞ…」「あの…」

私が言いかけると、うんうんと頷く

「大丈夫ですよ。彼のことは、心配は要りませんから」「それもなんですが…私が聞きたいことは…」

「何でしょうか?」「私をここに連れて来て…良かったんですか?」

それを聞き、斉藤さん大笑いをする

「大丈夫ですよ。これは、彼の意思でもあるんですから」「え…?」

斉藤さんは真顔でじっと私を見る

「もし、自分の身に何かあったら、全てを彼女につまり君ですね。伝えてくれと…」

ポカーンと斉藤さんの顔を眺める

「まぁ…反対の声も無いことは無かったのですが…。他でもない彼の頼みですからね。親友としては…」

「お二人は親友なんですか?」「ええ…旧知の仲ですよ」

斉藤さんはそういって楽しそうに笑う。私も、苦笑いを浮かべる

そんな他愛もない話をしている時、一人の男が慌しく部屋に入って来る

「お前〜!お客人の前だぞ!」「す、すみません…ですが…」

その人は斉藤さんにそっと耳打ちをする。すると、斉藤さんの顔つきが強張り、普段でも怖いのに

さらに恐怖感がます。

「あ…あの〜。何かあったんですか…?」「あ、これは失礼…」

斉藤さんは深々と頭をさげた後、その人を部屋から退室させる

「貴方には、お話をしておいた方が良いでしょうね…」

斉藤さんの何とも言えない雰囲気に、生唾を飲み込む

「実は…彼を戻すことに、失敗しました…」「え!?」「本当に…すみません」

斉藤さんは頭を床に擦り付ける位に、頭を床に近づける

「え…あの…。頭を…上げて下さい…」

一人でオロオロとしていると、斉藤さんがゆっくりと顔を上げて私をじっと見る

「私達の力が足りないばかりに…貴方には、大変な迷惑を…。死んでお詫びするしか!」

「そ、そこまでしなくても…きっと、彼だって…」「いえ!これは男としてのけじめですから!」

斉藤さんは懐から拳銃を取り出してこめかみに押し当てる。動くとも出来ずに、ただその場に立ち尽くす

斉藤さんがゆっくりと引き金を引き始める…

パン!

「キャー!」


「はい…出来たわよ〜」「ニャ!」

出来上がった料理を食卓に運ぶと、ミュウ(彼)はウムと頷く。座ろうとした時に、電話が鳴る

「も〜誰よ〜」

そう文句を言いながら電話に出る。そして、ゆっくりとミュウの方を向いてウンと頷き駆け出す

ミュウは定位置の肩にピョンと飛び乗る。滑る様に車に乗り込み、現場へ向かって走り出す。


結局、斉藤さんはミュウが手を傷つけ、拳銃は床に落ちて暴発し、弾が足を貫通して入院中でなのです

で、私がその間だけってことで、代役を頼まれたんですけど…。今では、エージェントの一人として活躍してます

今では、ミュウと私は名コンビとちょっとした有名人です…。



戻る