日常 -第七章-
「こっちもいいと思うよ」「やっぱり、こっちだよー」

二人は、凄く楽しそうに服を選んでいる

今ものうちに逃げるか

そーと逃げようとした時、真琴に肩を掴まれる

「何処行くのー?」「いや…ちょっと、トイレに行こうかと…」「トイレはそっちじゃないわよー」

真琴はニッコリと笑いながら言う

「教えてくれてありがとな…」

出口と正反対じゃないかよ。そうだ!トイレには窓がある!そこから…でも逃げたあと…

想像して身震いをする

「ねぇねぇ…」「どうした?」「これとこれ。どっちがいい?」

あゆはニコニコ笑いながら聞いてくる

「どっちでもいいんじゃないか?」「どっちか決めて!」

あゆはブーと顔を膨らませる

「それくらい自分で決めろよ!」「これは、剛君のだよ!」「…はい!?」

目をパチクリさせる

「普通に着る服いるでしょ。だから、こうして選んだだよ」

あゆはそう言って笑う

「それはどうも…」「凄く嫌そうだね?」「私は、こんなの選んだけどうかな?」

真琴も沢山持ってやってくる

「貸してくれ」「どうするの?」「着てみるのが一番だろ?」「それもそうね」

真琴はなるほどと頷く

「ちょっと待ってろ!」「これは、凄く楽しみね」

真琴はニヤニヤと笑う。更衣室に入って着替えして、カーテンを開ける

「どうだ?」「う〜ん、いまいちだね」「次ってみよ〜!」

親父苦さ…

それから、一時間近くいろいろな服を着せられて、何着か買わされた

「さ、帰りましょうか!」「そうだね」「待ってくれよ、重いんだからさー」

両手にいっぱいの荷物を持って、かなり後ろを歩きながら吠える

「だらしがないわね、男でしょ!」「それはそうだが…」

「じゃぁ、しゃんとしなさいよ!」

真琴は呆れ顔でこっちを見る

「でも、今は女だよ」

あゆのナイス突っ込みが入る

「本人が男って言ってるんだか、男でしょ?」「そうかな?」

あゆは俺の方を見る

「そうなの!」

真琴はそうキッパリと言い切る



「ふー、やっと着いた…」「あゆドア開けてくれ…」「うん、判った!」

あゆがドアを開けようとした時に、先にドアの方が開く

ゴン!

「ふにゃ〜」

あゆは開いたドアに顔をぶつけて、その場に倒れる

「お帰り〜!あれ?あゆちゃんどうしたの?」「おまえが開けたドアが、顔をにあたったんだよ」

呆れ顔で言う

「そうなの!」

透はあっけらかんと言う

「ちょっとこれもってろ」

透に荷物を渡して、あゆを持ち上げて中に入る

「ねぇ、誰のなの?」

あゆをソファーに置いて聞く

「何がー?」「これ!」

透は荷物を指差す

「それは、剛のよ!」「ふ〜ん…」「何だよ…その目は…」

後ろにさがる

「深い意味はないわよ」

透はそう言って不適に笑う

「俺だって、好きで買ってきたんじゃないんだからな!」

「着てる時すごく嬉しそうだったのは、何処の誰だったかしら?」

「な!俺は絶対にそんな事はしてない!」「自分では、そう思っても体は正直よね」

透はしらーと見てくる

「何が言いたいんだよ?」「別に〜」「それよりさー!着てみせてよー!」「絶対に嫌だ!」

そう言って、そっぽを向く

「否定する権利はないわよ!」

真琴はそう言って、睨みつける

「ちょっと待て、目がすごく怖いぞ…」「覚悟なさい!」「嫌だ〜!」

その後、真琴の着せ替え人形にされた

「どうだった?」「結構いい感じね」「でしょ。私の見立てに間違いはないのよ!」

真琴は腕を組みながらウンウンと頷く

「ところで、あゆちゃんはいいの?」

そっとのぞいてみると、えらくデカイこぶが出来ていた

「ところで…調べてきたのか?」「ちゃんと調べてきたわよ!」「っでどうだったんだ?」

「それがね〜」

透はなよなよし始める

「何だよ!もってぶらないで教えろよ」「あのね…戻るのはあったんだけど…」

「ならいいじゃないか」「でもね…」「どうしたんだよ?」「これだけあるの」

透はテーブルの上にたくさんのビンを置く

「な、何だよー!このビンの山わー!」「どれだか判らないの…」

透はテヘっと舌を出す

「なんだとー!」「ほら、ラベルのところに書いてある字が消えてるでしょ?」

一つの小瓶を手に取り見てみると、確かにそうなっていた

「確かにな、でも何でこうなったんだ?」「帰りに水をかぶちゃって…」

「おまえのどじのせいで、どれがそうなのか判らなくなったんだな!」

そう言いながら、透の胸倉を掴む

「ねぁ、何でこんなに沢山あるの?戻るやつだったら、一つあればいいじゃない?」

「それもそうだな」「あのね…。いろいろと貰っちゃったのよ」「たとえば、どんなのだよ?」

「猫になるとか犬になるとか」「はー?」

呆れ顔で透を見る

「だからいろいろと貰ったの!」「要するに、本物は一つってことだな」「そう!」

透はあっけらかんと答える

「試していくしかないか…」「頑張ってー!」

透はそう言ってパタパタと旗を振る

「まずはこれから試すか…」

一つのビンを取って中身を振り掛ける

「どうだ?」「う〜ん、何のかわりばえもしないわね…」「あ!猫耳がついてる!」

「何ー!」

そっと手で触ってみると、そこには確かに耳があった

「これは、猫っと」

透は新たにシールを貼り付ける

「次行くぞ!次!」

手当たり次第にビンを試していく

「残ったのは…このビンだけだな…」

テーブルの上の残り一本の小瓶を見る

「そうね…これが間違えなくそうね…」「ねぇ、どうして戻っちゃうの?」

「俺は男だ!だから戻る、それに何か理由が必要か?」「別にいらないけど…なんか勿体無いな〜って」

ビンを取って中身をかける

「どうだ?」「男には戻ってるよ…」「うん、確かに戻ってるわね…」

二人は複雑な顔でこっちを見る

「どうした、二人とも?」

…ん?やけに二人が大きく見えるのは、気のせいか?

「ふにゃ〜」「あゆが起きたみたいね」「そうね」「ここどこ?」「俺の家だ!」

あゆはすごく不思議そうな顔で、こっちを見てくる

「ねぇ…この子誰?」「誰って、剛に決まってるだろ!」

ちょっと待て。この子ってもしかして…

鏡の前に行く

「だー!何だよ!これわ〜!」

鏡に映ったのは幼稚園児の俺の姿だった

「本当に剛君なの?」「そうだ!」「キャー!可愛い!」

あゆはいきなり抱きしめてられる。

「く、苦しい…!」

すりすり…

「ふにゅふにゅしてて可愛い〜」「離してくれ…じゃないと息が…」「あ!ごめん」

やっとの思いで、あゆから開放される

「ゲホゲホ…殺すきかー!」「そんなことないよ…。可愛かったからつい…」

「確かに、可愛いわね」「そうね」

二人はニヤニヤと笑いながら、俺のことを見下ろす

「何だよ…おまえら目が怖いぞ…」「お着替えしましょうか?」

「お着替え…でも着るのないだろ?」「大丈夫ちゃんよ。ちゃんとあるから!」「な、何だと!」

「さー。いらっしゃい!」

ここで捕まる訳にはいかん!

走って逃げようとしたが、服を踏んで見事に床で頭をぶつる

ヒョイ!

真琴は俺の事を軽々しく持ち上げて歩きだす

「さー、お着替えしましょうか」「降ろせー!このブス!童顔!」「言いたいころは…それだけ?」

ふに!

真琴は俺の頬を楽しそうに引っ張る

「いたたたた…」「自分が置かれている立場を考えてものをいいなさい!」「はかりまひた〜!」

「お着替えする?」

必死に頷く

「判ればいいのよ!」

真琴はそう言って離すしてくれる。その後、約束通り着替えをさせられる

「わ〜!可愛い!」「プリティー!」「さて、ここで選択肢です!」「何だよ?選択肢って?」

「このままでいるか。それともこの女になるのを使って、また女になるかどっちがいい?」

透は小瓶をちらつかせる

「私は、このままの方がいいなー」

あゆは嬉しそうに言う

「何でだよ?」「だってー。可愛いもん!」

あゆはそうキッパリと言う

「人事だと思って好き勝手言うな!お前もなってみれば良いんだよ!」「それは嫌!」

「どっちにするの?」

その選択肢に真剣に悩む

「それ貸してくれ」「はい!」

蓋を開けて自分に振り掛ける

「あー!せっかく可愛かったのにー!」「うるさい!お前もなってみろ!」

あゆに幼児化するのを振り掛ける

「あれ?」「たいして変わってないわねー?」「そうね…」「ちゃんと変わってるもん!」

「何処が〜」

あゆは胸を指差す

「胸…?」「元からないやつが、何を言ってるんだか」「あ〜!ひどいよ〜!ちゃんとあったもん!」

「あたって事にしといていやるよ!」

そっけなく、そう言う

「あったもん!」

あゆは顔を真っ赤にしながら言う

「じっとしてろ、戻してやるから」

ビンの蓋を開けてあゆに振り掛ける

「結局、俺は戻れないんだな…」

残念そうに言う

「そうだね」「でも、戻ったじゃない!子供にだけど」

真琴は子馬鹿にしたように言う

「あれは二度とごめんだ!」「そうだ!」「どうした?」

「お兄さんが言ってたけど、しばらくすれば元に戻れるって言ってたよ」

「何で…それを先に言わないんだー!えー!」

そう言いながら、あゆの頬を抓る

「だってー!忘れてたんだもん!」「どれくらいで戻るんだ?」「一年だって…」「一年!?」

「しばらくは、このままなのね…」「そうだな…」「毎朝、楽しい登校が出来るね」

あゆは嬉しそうに言う。その顔がムカッと来たので頬を抓る

「俺は楽しくない!」「何でー!」「暑苦しからだ!」

あゆはぶーと膨れる

「ところで、真琴は帰らないにで良いのか?」「あれ?言ってなかったかな?」「何を?」

「今日から、真琴ちゃんも一緒に住むぬんだよ」「な、何ー!」「だから。よろしくね!」

真琴はニッコリと笑う

これは悪夢だ…いや、何かの間違えだ…絶対にそうだ!

「俺は絶対に嫌だからな!」「何でよ?」「何されるか、判ったもんじゃない!」

「でもいいのか、男の家に来ても?」「この家の何処に男が居るの?」

真琴はニヤニヤと笑いながら言う

「剛は女だし。透は見ての通りだし」「それも…そうだな」「それじゃ!皆で夕食作りますか!」

「頑張るぞ〜!」「頑張ってねー」

そう言って、手を振る

「あんたも来るの!」

真琴に耳を引っ張られながら、台所に連れて行かれる

「剛君…」「ん?何だ?」「今日お風呂一緒に入ろ!」

あゆの発言に、思わず指を切りそうになる

「な、何だよいきなり…」「だめ…?」「入ってあげなさいよー」「あのなぁ…」

「何か心配事でもあるの?」「性別の問題が…」「今は何の問題も無いよ!」

「そうよー。だから入ってあげさい!」

何で、命令系なんだ?

「判りましたよ」「やったー♪」

「あの〜。皆さん…勝手に盛り上がるは良いんですが…少し手伝ってもらえないかなー?」

「あ!すっかり忘れてた!」

何とかできた夕食を四人で食べる。食べ終り、あゆと一緒に風呂に入る

「なんか不思議だね」「そうだな、俺とあゆが一緒に入る何てそうは無いもんな…」

その時ドアが開いて真琴が入ってきた

「何してんだよー」「何を驚いてるの?」「いきなりだから…」

「ふーん。そう言えばこの前、私の胸が無いとかい言ってたわねー?」「え!?そんなことを言ったかな…?」

「言ったの!その日の真琴すごく怖かったんだから!」

あゆは真剣な顔で言う

「あるかどうか、確かめてみなさいよー!」

真琴は胸を前に突きだす

「俺より…無いな!」「あんですって〜!」「あゆの方がよな」「あんた〜、死にたいの?」

「何だよ〜。確かめろって言ったのはそっちだろ…」「真琴も少し落ち着いて…ね?」

「ま〜、今日のところは勘弁しといてあげるは」

真琴の顔は引きつっていた

「剛君、背中流しっこしよ〜」「誰がするかそんな子供みたいなこと」

そう言って、そっぽを向く

「黙って、座ろうねー剛ちゃん」

真琴はにこーと笑いながら言う

「は、はい…」

こ、怖い…

「私からやるねー」

あゆに背中を流し始める

「ほら、私もやって…」「へいへい…」

真琴の背中を流す

「交代だよ」

そのまま、背中を流しあった

「俺は先に上がるから」

そう言って出て部屋に帰る。

今日は疲れたー、もう寝よ〜

ベットに入って眠った。こうして、あゆと真琴との共同生活が始まったのである

ーENDー


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