モルモット

出勤して来て、ロッカーを開けて白衣を取り出して、それを羽織り。その足で、とある場所に向かう

その場所の近くまで来た時、中から何やら話し声が聞こえてくる。気になったので、聞耳をたててみる

『お姉ちゃん。また、失敗したの?』『だって…あれ、難しいんだよ…』

『でもね〜。そう何度も失敗しないよ…普通』『だって〜』

何の失敗だ?

『言い考えがあるよ』『え、どんな考え?』『それはね。注射の練習を手伝って貰うの』

なるほど、注射か〜。それは、少しまずいな。下手すれば患者の命にも関わるからな。

うんうんと頷く

『え〜!そんなの…その人に、悪いよ〜』『それに決定!』『あ、茜…』

『何を言っても駄目だよ。これは、患者さんを助けるって意味もあるんだから!』

『わ、解った…』『それで、練習相手は…あ!良い人が居るよ』『え、誰…?』『鳴海さん!』

ふむ、孝之ならうってつけだな

『駄目!それは、絶対に駄目だから…』『それじゃぁ…』

ん?待てよ、ここに居ると俺が練習相手に……

足音を潜め、その場から立ち去ろうとした時、襟を掴まれてそのままひこずられる


「遙。練習なら、コレ使って良いわよ!」「コレって言うな!それから、俺はなるって…」

「やってくれるわよね?これは、全患者さんのためなんだから」

水月はニッコリと笑いながらそういう。目は笑ってなく、その目は

『拒否したらどうなるか、解ってるわね?』と語っている

「謹んでお受けさせて貰います…」「宜しい!」


「必要な物は持って来た?」「う、うん…」「じゃあ、ここに置いて」

そういって、机を指差す。涼宮は、注射器などの入れ物を持って来る時に、つまずいて転びそうになる

その時、注射器が宙を舞い。俺の額にプスッと刺さる

「ご、ごめんなさい…」

涼宮は急いで抜こうとするが、必死でそれを止める。その後も、俺は生傷がたえることは無かった


「どうだった?」「うん。もう大丈夫だよ」

涼宮は笑顔でそう答える

「そう。それは良かったわね」「うん!」「ところで…遙」「モルモット(俺)は?」「え…」

「まさか…」「う、うん…」


『花が綺麗だな〜。あ、向うに綺麗なお姉さんが居る〜』

パン!パン!

「ちょっと、しっかりしなさい!」

水月は必死に頬を叩いて、意識を取り戻そうと頑張る

「聞くの怖いけど…どれ位、とったの?血…」「体の…ほとんど…」「あは…あははは…」

茜は苦笑いを浮かべながら、その場に立ち尽くす



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