| 校門のところで、水月が出てくるの待っていると、水月が血相変えながら走って来る
 どうしたんだ?
 
 「どうした…?」
 
 水月は、その問いかけに答えずに俺の後ろに回りこんで、辺りを見渡し始める
 
 「おい…何があったんだよ?」「もう…居ないわね…。ふぅ…」
 
 何があっただよ…本当に…
 
 
 「はぁ?見ず知らずの奴に追いかけられた〜?」「うん…」「それも、女の子だって〜?」「うん…」
 
 「良かったな〜。晴れて彼女が…ゲフ...」
 
 腹を押さえながら、膝から崩れ落ちる
 
 「口は災いの元よ。覚えときなさい!」「はい…」
 
 水月は、何かを感じ取ったようにキョロキョロとし始める。しばらくして、叫び声が聞こえてくる
 
 『みゅ〜♪』「来た〜!」「はい…?」「良いから来て!」
 
 水月に引っ張られる形でその場を後にする
 
 
 「ここまで来れば、大丈夫ね」「一つ聞いても良いか?」「何?」「『みゅ〜♪』って何だ?」
 
 「そんなこと、知らないわよ…」「どうして、そう叫びながら水月に向かって来るんだ?」
 
 「だから、知らないって言ってるでしょ!」
 
 水月がそう叫ぶと同時に、首を後ろに引っ張られる
 
 「みゅ〜♪」「あいたたた…」
 
 見てみると、小さな女の子が水月の髪を持ち、嬉しそうに『みゅ〜♪』と言っている
 
 「ちょっと…見てないで何とかして…いたたた…」「あ、うん…」
 
 いろいろと試してみるが、一向に離す兆しはみえない
 
 「水月…」「諦めるって言ったら…」
 
 水月は、首を後ろに引っ張られながら睨みつける
 
 「善処…させてもらいます…」
 
 深々と頭を下げる。そんな時、後ろから声をかけられる
 
 「あの…すみません…」「はい?何ですか?」「この辺りで『みゅ〜』って言ってる子を知りませんか?」
 
 「『みゅ〜』ですか?居ますよ…」「え、何処ですか?」
 
 後ろを向いて、水月を指差す
 
 「あそこで、連れの髪を引張ってますけど…」「あいたたた…」「確か…この辺にあったはずだけど…」
 
 そう言いながら、鞄をゴソゴソし始める。そして、鞄からテリヤキを取り出す
 
 「みゅ!?」
 
 さっきまでじゃれ付いていたのに、ピタッと動きが止まり、じーっとテリヤキを見つめる
 
 「どうぞ…」「みゅ〜♪」
 
 そう叫んで、嬉しそうにそっちに向かって行き、テリヤキを食べ始める
 
 「お騒がしました」
 
 と丁寧に頭を下げ、二人で歩いて行く
 
 「あいたたた…」「大丈夫か?」「うん…何とかね…。それで…」「あそこ…」
 
 歩いて行く後姿を指差す。歩いている二人に、青髪のツインテールの子が駆け寄と同時に、髪を引張られる
 
 『うぎゃああぁぁぁ…』『みゅ〜♪』
 
 叫び声と嬉しそうな声が聞こえてくる
 
 「彼女も大変ね…」「そうだな…」
 
 二人で暖かくそれを見送る
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