| 学校帰りに、電柱に寄りかかる感じで立っている、一人の子供に気がつく
 何をやってだ…迷子かな?それとも、誰かとの待ち合わせか?
 
 そんな事を考えながら歩いていると、少女が顔をこっちに向け、じーとこっちを見てくる
 
 あたりを見渡すが、近くには俺一人しか居ない。
 
 少女はにっこりと笑った後、こっちに走って来て飛びつく。そして、一言…
 
 「パパ…」「は、はい…」
 
 今なんて言った…ぱ、パパだと〜!
 
 驚きのあまり、数回瞬きをする。とりあえず、少女を降ろして眺めるが、心当たりはまったく無い
 
 えっと…歳は、一年生くらいかな?だとすると、この子が出来たのは…
 
 そんな事を真剣に考えている時、肩をチョンチョンと突っつかれ、振り返ると同時に顎にアッパーをくらい宙に舞う
 
 な、何で…俺が何を
 
 落ちてきた瞬間に、襟を掴まれる
 
 「きちんと、説明してもらえるかしら〜。パ〜パ〜!誰の子なのよ!いったい何時、作ったのよ!」
 
 そう叫びながら、水月はガクガクと俺を揺すられる
 
 「ママ〜!やめて!」「はい…?」
 
 水月は驚いて、俺から手を離す。俺は、力なくその場にぶっ倒れる
 
 
 「それで、私の所に来た訳ね」「はい…」「他に頼れる人が居ませんから…」
 
 香月先生は、ビーカーに入ったコーヒーを差し出すが、丁重にお断りする。残念そうな顔をした後、それを飲み始める
 
 「それで、名前は?」「ハンナ!」「そう。で、どうやってここに来たの?」
 
 「機械を使ったの」『機械…』
 
 水月と一緒に首を傾げる。ハンナは香月先生を指差しながら
 
 「香月のお姉さんが作った機械だよ。忘れてるの?」「良い子ねー」
 
 香月先生は、嬉しそうにハンナの頭を撫でる
 
 
 ハンナを元の時間に戻す方法は、香月先生が考えてくれることになった。
 
 「で、どうするの?」「何がだ?」「何がってね〜」「パパとママ…喧嘩しないで…」
 
 ハンナは目をウルウルさせる
 
 「あっ!」「えっ!」「だ、大丈夫よ…」「そ、そうだよ。喧嘩なんてしてないから…」「本当に…?」
 
 水月と一緒に頷く。すると、ハンナはニッコリと笑い、俺と水月の間に入って手を握る
 
 水月の方を見ると、水月は溜息をつきながら軽く肩を上に持ち上がる
 
 とりあえず、俺の家に連れ帰る。すると、ハンナは疲れていたのか、すぐに眠ってしまう
 
 「それで、これからどうするんだ?」「そうね…香月先生が何か手立てを見つけるまで、世話をしないとね…」
 
 「俺達の子供だしな…」「実感なんて、ぜんぜん無いわね」「俺もだ…」
 
 二人でしばらく、眠っているハンナを眺める
 
 「なぁ…誰にも見られてないよな〜?」「た、たぶんね…」
 
 心配事は一つ。皆にこの事がばれてないかだ。もし、ばれていれば冷やかされるに決まっている
 
 
 数ヵ月後…
 
 「は〜い…ご飯よ〜!玩具片付けなさい!」
 
 ハンナはそれを聞き、テキパキと玩具を片付ける。今だ、元の時間に戻す方法は見つかっていない
 
 今現在は、ハンナはこの時代の学校に通っている
 
 「さ〜。今日はカレーよ!」「うげ…」「何?その『うげ…』ってのは?」「私、カレー大好き!」
 
 「沢山あるから、いっぱい食べるのよ」「うん!」
 
 ハンナはパクパクとカレーを口に運ぶ
 
 「学校はどう?」「うん。楽しいよ」「そう…」「あれ?パパ…どうしたの?」
 
 「パパは疲れて寝てるのよ」「そうなの…?」
 
 違う…俺は、この辛さに体が耐え切れなくて…ガク
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