君ラヴクエスト -第弐拾二章-
さて、これからどうしたものか…。あれをくらえば、おしまいだ。待て、前にアユが…。


「おい、アユ」「あん? 何なのさ?」「お前って、すごい技を持ってるって聞いたけど、本当か?」

「それくらい当たり前さ」「だったら、最後の戦いの時に…」「それは駄目さ」「何でだ?」

「あの技には、決定的な弱点があるのさ…」「弱点? そんなのがあるのか?」「唯一の弱点が…」


俺はデビハル目掛けて大きく飛び上がる。

その弱点とは、打つために『必要なエネルギーを充填する時間があることさ…』だ!

「ふ、あまいわね!」「何!」

デビハルは銃を二つ分けて、一方を俺の方に向ける。

「私の隙をつこうなんてできるわけが無いでしょ!一足先にあの世に行ってないさ!」

デビハルが引き金を引こうとした時、弓がデビハルの手に突き刺さる。

「ぐ…」「私達だって、やる時はやるのよ!」「ち〜!虫けらどもが〜!」

デビハルはキッとチズルの方を睨みつける。

「どこを見ている!」「し、しまった!」

デビハルに切りかかるが、寸前のところで交わされる。

「ふ、あまいわ!」「それはどうかな?」「何!」

身をひる概して、デビハルの翼を切る。

「ギャ〜!」

今度はそのまま宙で一回転して、そのまま下へと蹴りで叩き落す。

「ぐはぁ…」「覚悟〜!」「そうは…させるか…」

俺に反撃をしようとする、デビハルの服をくないで地面に固定する。

「な、何だと!」「さようなら」「な、何〜!」

デビハルに光の剣を突き刺す。

「ギャー!」「これで、終わりだ!」

さらに剣を深くさす。デビハルは少しの間もだえ苦しみ、動かなくなる。

次第に白くなってゆき、チリにとなる。

「終わったな…」「そうね。これで終ね」「短かったようで、長かったですね」

タカユキを抱え上げる。

「さて、帰るか」「そうね」「そうですね」

飛行船へと向かって歩き出す。

物陰から見る三つの影があったことに、俺達の中に気がついた者は誰一人としていなかった。

「あの程度の奴に、これだけの時間をかけるとわなー」「そうね。でも、強くなるわよ。あの二人…」

「今は、一握りの平和を楽しむがいいさ…」「ほら、さっさと来るさ」「判ってるよ。次が楽しみだ…」



「皆さん、お疲れ様でした。なんとお礼を言ったらいいのでしょうか…」

「良かった〜。タケルちゃん!生き返って…良かった〜!」「おい…やめろって…恥ずかしいだろ?」

「礼を言うのは俺達の方だ。死人まで生き返らせてもらったんだから」

『タカユキく〜ん』「うわ〜、どっちのハルカも…少し落ち着け…」「嫌!」「もうどこに行かないで」

「まったく、どこも変わらないな…」「そうね…」「それじゃ、これで失礼します」

「本当に有難う御座いました」



『乾杯!』

事件も無事に解決し、それを祝して宴会が執り行われる。

「タカユキ君。はい、ミートパイだよ」「タカユキ君。はい、芋きんつばだよ」

「おいおい…いくら俺でも二つはきついぞ…」

それを聞いて二人のハルカは火花を散らす。

「タケルちゃん。はい」「自分でできるって!」「駄目!はい!」

「一方は両手に花で、一方は馬鹿カップルね」「そうだね。あ〜あ〜、私もあんな人がほしいな〜」

「あら、アカネならすぐじゃない? 私は無理だけど…」「歳だからね」「……誰が歳ですって〜!」

走って逃げるケイをチズルが懸命に追いかける。その光景をアカネは呆れ顔で眺める。


何日ぶりかなー? こうして夜空を眺めるのって。

船に揺られながら、夜空を見上げていると、後ろから頬を引っ張られる。

「あいだだだ…ほれだ!」「私に黙って、いったい何処に行こうとしてるかしら〜?」

「ほつき!」

ミツキは頬から手を離す。

「酷いじゃない!黙って行くなんて…」「別に…置いて行くつもりは…」

頬を摩りながら言う。

「あったんでしょ!」

ミツキはずいっと顔を近づけてくる。思わず、後ろに二、三歩さがる。

「どうなの!」「俺は、ミツキに危険なことをさせたくなかったんだ。ただ…それだけだ…」

「そう…でもね、もしもあなたに何かあったら…私…」

ミツキは抱きしめる。

「俺が悪かった。一緒に行こう」「……うん」

ミツキは涙を目にためて、笑顔で頷く。

「今日はもう寝るか?」「ううん。まだ駄目よ!」「え? まさか…」

ミツキに引っ張られながら船内に入る。

「さー、飲むわよ〜!」「やっぱり…こうなるのね…」「おじさん!じゃんじゃん持ってきよね!」

ーENDー


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