「初夢…?」「うん。初夢…」「見てないのか?」
昼休み、教室でぼーとしていると、涼宮と孝之がやってくるなりこんなことを言い出した
「お前らは、見たのか?」「俺は見たぞ!」「わ、私も…見たよ…」
何故か、涼宮は顔を紅くしながら俯く。それを見て、首をかしげる
「で、どんなの見たんだ?聞かせてくれよ…」
興味津々の顔で二人の顔を交互に見る
「解った…。俺から話すよ…」
朝日が眩しく目を覚ますと、耳にテンポの良い包丁の音が聞こえて来る
起き上がって台所を覗くと、エプロン姿の遙が料理をしてた。遙は、こっちに気がつきにっこりと笑う
「お、おはよう…」「おはよう…あと、少しで朝ご飯出来るから…」
ぽーと遙のエプロン姿に見とれる。遙もそれに気がつき、頬を赤らめる
「ど、どうしたの…?」「え、あ…何でもない…着替えてくるわ…」
そういって足早に部屋に戻り、置いてある服に着替える。ちょうど着替え終った頃に、遙が呼びに来る
本日のメニューは『ご飯、味噌汁、秋刀魚の塩焼き、漬物』といったメニューだったが、遙が作ってくれたのだから何でも良いと思う
遙も向かいに座り、二人で手をあわせてから食べ始める。そして、味噌汁に手をつけた時……
『う、苦い…』と言いそうになるが、必死に飲み込む
「どうしたの…?」「ん?べ、別に…何でもないよ…」
そういって愛想笑いをする。遙は、首を傾げながら味噌汁を飲んで、すぐにその場に置く
「すぐに、作り…」「良いよ」「え!?」
遙は目をパチクリさせる
「これは、これで美味しいから」「本当に…?」「本当だ!」
そういってニッコリと笑う
「孝之さん。起きて…」「う〜ん…あと、五分…」「さっきも、そう言ったよ。起きないと…」
バサッと布団を剥ぎ取る。孝之さんは驚いて、飛び起きる
「な、何するんだよ」「起きてくれないからだよ」
そういってクスクスと笑う
「水月の言ってた通りだね」「水月の…?」「うん。孝之さんが起きない時は、こうしろって」「水月の奴…
孝之さんは、不機嫌な顔をしながら、何やらぶつぶつ言ってる
「早くしないと、遅れちゃうよ…」「お!そうだな」
孝之さんの身支度を手伝い、出かける前のキスして出て行く。
「ほ〜。二人とも、鴛鴦夫婦の夢ね〜」
しらーっと、二人の顔を見る
「ところで、お前はどんな夢を見たんだ?」「俺か…?」「あ、私も聞きたい」「俺は…」
「お帰り」
エプロン姿の水月が出迎えてくるれる
「ただいま。今日は何だ?」「カレー!」
水月は嬉しそうに答える。それを聞き、回れ右をするが、ガシッと肩を掴まれる
「何処に…行くの?」「煙草でも…買に行こうかと…」「あら〜。煙草?吸わないのに、何で〜?」
水月は笑顔でそう聞いてくる。目は笑っていない
その後…目の前にカレーが置かれる。
「大丈夫よ。辛さも市販の辛口だから」
ゴクッと唾を飲み込んで、一口食べてみる。
「ん!普通だ…」「でしょ?さて、私も食べよ…」
夕食の片付けを終えてたあと、水月にとある事を持ちかける
「食後の運動しないか?」「え…い、今から…」「嫌か…?」
水月は首を横に振る。そして、二人でベットへと行く
「ここで目が覚めたんだよ。まったく、勿体無いことしたよな〜。ん?どうした…」
孝之と涼宮は苦笑いを浮かべながら、俺の後ろを指差す
ゆっくりと振り返ると、そこには笑顔の水月が立っていた。当然、目は笑っていない
グイッと俺の耳を引っ張り、そのまま歩きだす
「あいだだだ…」「ちょっと、こっちで話があるから、付き合って〜」「お、俺は…次の授業が…」
「こっちが最優先事項よ!」
耳を掴む手にさらに力が入る
「あいだだだ…」
必死に孝之と涼宮に助けを求めるが、孝之は手を合わせ、涼宮は苦笑いを浮かべながら手を振るだけ
「助けて〜」
その一言を発した瞬間、無常にもピシャッと教室のドアが閉まるのだった……
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