初詣

「それで、涼宮はどうしたんだ?」「それがな、留守なんだ…」「留守…?」

孝之と一緒に、涼宮の家に向かう途中のささない会話である

「水月も居ないのか?」「そうなんだ。電話しても『電源を…』ってお決まりのメッセージしか…」「そっか…」

しかし、二人とも居ないとなると…二人でどこかに行ったのか?

そんなことを考えているうちに、涼宮の家の前に着く。孝之が呼び鈴を鳴らすと、涼宮のお母さんが出て来る

「あら…」「あの〜。遙は…」「御免なさい…朝方、速瀬さんと茜の三人で出かけたみたいなの…」

「そうですか…」「何か用事?」「初詣を一緒に行こうと思って…」「あら…それは、すみませんね…」

ぺこりとお辞儀をし、その場から離れる


結局、色気も無く男二人で神社にやって来る

「さすがにすごい人だな〜」「そうだな〜」「さっさと参拝済ませて帰ろうぜ」「そうだな…」

人ごみを掻き分け、何とか賽銭箱の所にたどり着き、賽銭を放り込む

参拝を済ませ、また人ごみを掻き分けてその場から離れる。やっとの思いで、人の少ない場所に出る

予想はしてたが、これほどとはなー

そんなことを考えている時、背中に何かがぶつかる

「キャッ!」「あ、御免…大丈夫…」

振り返って、目を丸くする。そこには、巫女さんの格好した涼宮が尻餅をついてる

「す、涼宮!」「え…あ!」


「ここで良いのか?」「うん…御免ね」「気にするなって」

涼宮の運んでいた、ゴミを所定の場所に下ろす

「遙〜。終わ…ゲッ!」

水月は俺の顔を見るなり、やばいといった顔をする。当然、水月も巫女スタイルである

「は、遙…戻るわよ!」「え…」

水月は、涼宮の手を引っ張り、戻ろうとする。そんな水月の方をガシッと掴む

「どこに行くんですか?水月さん…」


「なるほどね。卒業旅行の旅費を稼ぐために、巫女さんのバイトをねー」「解ったでしょ。仕事があるから…遙」

「う、うん…」

水月と涼宮は、破魔矢などが売ってある場所の辺りに消えて行く

そんな二人を見送りながら『水月の…巫女さんも可愛いな…』と一人で呟く


「孝之!こっちだ!こっち!」「何処に居たんだよ…ずいぶんと探したんだぞ…」

孝之は肩で息をしながら、俺の方を見る

「孝之…おみくじやろうぜ!」「俺は良い…」「良いから…良いから…」

そういってニヤニヤと笑いながら、孝之を引っ張って行く


「ゲッ!た、孝之…」「た、孝之君…」「お、お兄ちゃん!」

ちょうど良いように、三人ともそろいぶみだ。孝之は、涼宮の巫女スタイルに見とれ、その場に立ちつくす

涼宮も顔を真っ赤にし、仕事所ではなくなったのは言うまでも無い

「こうなる事は…」「目に見て解りますよね〜!」

水月と茜ちゃんの冷たい視線が突き刺さる

「僕が悪かったです…」

深々と頭を下げる

「じゃあ、この破魔矢を買って!」「それから、このお守りも!」

二人は、見るからに営業スマイルで破魔矢とお守りを差し出す。その目は『拒否なんてしないよね?』といっていた

「ありがたく買わせて貰います…」『有難う御座います〜!』「あ、おみくじもどう?」

水月は木の筒を差し出す。筒の中から、出て来た棒を水月に渡すと、それを持って奥に消えて行く

しばらくして、おみくじを持って戻って来る。ドキドキしながらおみくじを広げるとそこには

「吉か…」「まずまずでじゃない」「良かったですね」

おみくじを折りたたみ、近くの木に縛り付けて戻る

「俺は帰るから!」

そういって帰ろうとした時、肩をガシッと掴まれる

「あら…何を言ってるのかしら?」

「そうです。お姉ちゃんを使い物にならなくした責任は、きちんととって貰いますから!」「せ、責任…」

二人は大きく頷く。その後、涼宮の分まで働かされたのだった



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